オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。
今日は新しい尿検査機器 『ポケットケム(アークレイ社製)』 のご紹介をします。
慢性腎臓病(CKD; Chronic Kidney Disease)とは
犬猫も高齢化に伴い、慢性腎臓病(CKD、以前は慢性腎不全と呼んでいた)が増加傾向です。
慢性腎臓病CKDは、様々な腎疾患により、腎臓の障害が慢性的に進行していく病態です。
一度進行した腎臓の障害は元に戻すことはできず、残った腎臓の機能をいかに温存するかが治療のカギとなります。
そのため、早期に発見し、治療を開始することが肝心となります。
最近の新しい知見:「タンパク尿が腎臓病の予後を悪化させる!」
慢性腎臓病CKDの治療には、食事中のリンやナトリウム、タンパクを制限する食事療法や、脱水を改善する点滴療法などがあります。
最近では、尿中のタンパク漏出により、腎臓病の動物の予後が悪化することが示されています。
そのため、慢性腎臓病CKDと診断された犬猫において、腎臓の糸球体という部位からのタンパク漏出を防ぐ新しい薬も登場してきました。
そのため、検査によりタンパク尿を認めた動物に対しては、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)や、アンギオテンシン受容体阻害薬(ARB)という種類の薬を投与することをお勧めしています。
院内で迅速にタンパク尿の数値を計測可能に!
当院では、これまで外注検査で尿タンパク漏出を検査しておりましたが、院内で尿タンパククレアチニン比(UPC)を検査可能な機器を導入いたしました。
採尿をしてから約1分間で尿タンパクの数値が計測できるようになりましたので、慢性腎臓病CKDの犬猫において、上記のお薬を投薬すべきかの判断が迅速に可能になります。
左は正常な猫ちゃんの検査結果です。右は尿タンパ漏出を認めた猫ちゃんの検査結果です。
ちなみに・・・
・犬の正常値は、0.5 未満
・猫の正常値は、0.4 未満
と言われています。
しかし、猫の慢性腎臓病CKDでは、タンパク漏出は起こりくいと考えられるため、尿タンパク/クレアチニン比(UPC)が0.2以上の症例では上記の投薬を行うことが推奨されています。
早期にタンパク尿を診断し、治療を開始することで腎臓病の悪化を防ぐことが可能となりますので、腎臓病CKDと診断された犬猫ちゃんは、尿検査(尿タンパクの検査)もご検討ください。
↓慢性腎疾患(CKD)の診断に役立つ新しい検査についても併せてお読みください。