猫ちゃんの健康寿命を延ばす~関節炎の注射『ソレンシア』新発売!

2023年05月22日 (月)

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

私としては約3か月ぶりのブログ更新となってしまいました。。。

今回は、猫ちゃんのとても画期的な治療薬が登場してましたので、発売から少し経ちましたが久々にブログを書くことにしました。

 

 

年を取ると人間も、膝の関節が痛んで階段の昇り降りが苦痛になったりしますよね。

それは関節の内部で、骨の周りを覆っている軟骨がだんだんとすり減ってきてその下の骨が変形し、動くと痛みを伴う『変形性関節症骨関節炎OAとも呼ぶ)』が起きてくるわけですね。

ワンちゃんも高齢になると、だんだんと関節が痛くなりびっこをひく子が多いので、「年取って関節が痛いのかなぁ…」というイメージはできるかと思います。

しかし、猫ちゃんにも関節炎があることをご存じでしょうか?

前にも、当院の老犬・老猫の予防のページ(詳しくはコチラ)でも書いたことがあるのですが、実は猫ちゃんで関節炎を発症する子は90%以上という報告もあるくらいで、意外と多いんですね。

しかしながら、ワンちゃんのようにびっこをひくことが少ないために見逃しがちな病気と考えられています。

 

タイトルにも書きましたように、2000年頃から『健康寿命』ということがしばしば言われるようになりました。

健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることがなく生活できる期間」と定義されます。

あちこち痛い痛い言って生きていくわけではなく、元気に快適に過ごせる期間をいかに延ばせるか?という考え方です。

 

これは猫ちゃんにもあてはまります。

猫ちゃんって元々運動神経が良すぎて、多少足が痛くて運動能力が落ちたとしても、一見普通に生活しているように見えるんですよね。

物をしゃべらない分、飼い主さんが注意深く猫ちゃんを観察してあげると気づくことも多いのではないかと。

高いところに上がれない、毛づくろいをしなくなって毛ヅヤがバサバサ、トイレも失敗しちゃう、ほとんど寝てばかり…

そういった行動の変化も、実は関節炎で足が痛いから動きが緩慢になったり、自分で動かさないように制限してたりする結果なのかもしれません。

 

そこで、猫ちゃんが関節炎(OA)になると、日常の行動でどういうしぐさをするのかという資料をゾエティスさんが作ってくださいました。

 

これを分かりやすくアニメーション動画にしてくれたのがコチラです↓

 

 

猫ちゃんは明らかな「びっこ」が出ることは珍しく、このような行動の変化でお知らせしてくれてるんですね。

猫ちゃんの関節炎が多い場所は、後ろ足では膝(ひざ)や股関節(こかんせつ)、前足では肘(ひじ)が多く、もう一つ背骨(せぼね)の馬尾という場所(腰骨と尻尾の間)が多いのです。

前足に関節炎があると、階段の降りや高いところから降りようとするときに、着地で前足に衝撃が加わるのを避けるため、降りるのを躊躇したり、前足だけそーっと伸ばしてゆっくり着地するような行動を取ります。

後ろ足やせぼねに関節炎があると、後ろ足でキックするのが痛いため、高いところに登ろうとするのを躊躇したり、ジャンプしてみたものの一発では登りきれずに、前足を引っかけて前足の力でよじ登ろうとします

このような詳細な猫の行動パターンは、私たち獣医師もこれまで知らなかったところなので、これまで猫の飼い主さんたちにも正確に伝えることが出来なかったのが現状なのです。

 

月1回の注射で関節炎を改善する注射『ソレンシア』

 

前置きがだいぶ長くなってしまいましたが、今回ご紹介するのは猫ちゃんの関節炎を改善する注射薬『ソレンシア』です。

これはどんな注射かというと、以前に犬のアトピー性皮膚炎の治療薬として『サイトポイント』という注射が登場したことをブログでご紹介してましたが、それと同じモノクロ―ナル抗体製剤となります。

関節炎が起きた際に、関節軟骨の細胞が傷ついて様々な炎症反応がスタートします。

そこで放出された物質があちこちに働きかけて、さらなる関節の破壊や炎症の増悪を次々と引き起こしていくのですが、一連の反応の最初のスタートとなるタンパク質の1つである「神経成長因子(NGF)」という物質を捕まえて機能させなくするという画期的な治療です。

難しいですよねぇ…なんて表現すればよいか。。。ドミノ倒しの最初のドミノが倒れないようにするとでも言いましょうか。

 

1つのタンパク質のみを対象に効果を発揮する注射薬のため、他の臓器への影響がとても少なく、副作用が出にくい治療となるのはサイトポイントと一緒ですね。

そのため、高齢の猫ちゃんでしばしば発症する慢性腎臓病においても、ステージ1・2の慢性腎臓病の猫ちゃんではきちんと臨床試験が行われ、安全性が証明されている治療薬となります。

 

関節炎の猫ちゃんで、これまで実施されていた治療はというと、消炎鎮痛剤やサプリメントなどがあります。

猫ちゃんはなかなか薬を飲ませるのが大変ですし、消炎鎮痛剤の長期使用も腎臓などへの悪影響が心配されます。

この『ソレンシア』のいいところは、月1回の皮下注射だけで良いところでしょうね。

家での毎日の投薬からも解放されますし、副作用の心配も減るのですから、非常に画期的に治療薬ですね。

 

どのくらい効果が期待できるの?

 

ソレンシアでどのくらい効果が期待できるの?ということが皆さん気になることかと思います。

臨床試験の結果から、初回と1ヶ月後の2回接種をした猫ちゃんの76%(4頭中の3頭)で治療効果が出たと報告されています。

実際に私のみている患者さんも、注射後に動きが良くなって走るようになったと仰ってましたし、他の病院の先生の報告でも注射後数日で効果があらわれる子も多いようで、速効性も期待できそうです。

『ソレンシア』は欧州では2年前から発売され使われている注射薬なんですが、欧州での治療を受けた猫ちゃんのビフォーアフターの動画をZoetisさんが作ってくれてますので、まずは一度そちらを見ていただけると早いかと思います。

(効果の程度には個体差がありますのでご了承ください)

 

 

いかがだったでしょうか?

この動画に出てくる猫ちゃんは、治療効果があった子たちの映像を集めてるんだとは思いますが、月1回の注射だけでこれだけ生活の質QOLが改善する可能性があるのですから、やってみたいなと思った方はぜひ一度ご相談ください。

 

Zoetisさんがソレンシアの特設サイト『CATFLIX』というサイトを開設しておりますので、興味を持たれた方は以下のバナーをクリックしてそちらもご覧くださいね!

 

 

ネコちゃんのまぶたの大きなイボ(レーザー手術例)

2022年03月02日 (水)

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

3月になりましたね。4月から本格的に病院が混み合う前にフィラリア検査を済ませたい方は、今月からフィラリア検査と予防薬の処方が可能です。(健康診断の血液検査も同時に行うことも出来ます)

また、動物管理センターに確認すると、狂犬病の「注射済票」も本日付の注射から新年度(令和4年度)の済票が発行されるとのことでしたので、狂犬病接種も同時に早めに済ませていただくことが可能です。

外来が落ち着いてる今の時期に済ませたい方はどうぞお越しくださいませ。

前置きが長くなりましたが、今回はレーザー手術器を使って目のイボを手術した猫ちゃんのケースをご紹介します。

 

目の大きなイボでお困りのネコちゃん。。。

飼い主さんがブログを見てレーザーで治療ができないか?とお越しになりました。

かなり大きなイボ!本人もイヤだったことでしょうね。

 

手術日当日の顔写真です。

上まぶたから大きなイボがぶら下がり、視界を邪魔しておりました。

 

診察時に針を刺して細胞を取る検査を行ってましたが、中には液体がたまっており、悪性の腫瘍を疑う細胞は取れませんでした。

もしこのイボを完全に切除をするとなると、まぶたの大部分を切除することになり、目の形が大きく変わってしまう可能性があります。

 

そこで、レーザーでやってみましょうとお話しました。

体にできたイボの場合は全身麻酔を必要としないことが多いのですが、今回は目のイボなので全身麻酔で行いました。

まず、袋状になっている膜に穴を開けて、中身を出します。

 

中には茶色い液体がたまっており、しぼり出すとペチャンコになりました。

 

しぼんだ袋の部分をレーザーメスで切り取っていきます。

下の眼球が熱でダメージを受けないよう、少しずつ冷やしながら進めます。

上の包んでいる袋を切除後、まぶたに残る分泌腺の細胞に対しては、レーザーで蒸散・凝固処置を行いました。

治療終了後の写真がこちらです。

 

治療が終わった段階では、袋の底にあたる部分が黒く凝固されているのがわかりますね。

 

実は、気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、目の下のほっぺに白いしこりがありますよね。

この猫ちゃんは、体にもたくさんの同様のしこりが出来ておりました。

細胞を取る検査を事前に行っており、そのたくさんのしこりは肥満細胞腫という腫瘍だと分かっておりました。

 

肥満細胞腫は周りにタコ足を伸ばすように広がる特徴の腫瘍ですので、レーザーでの治療は向いておりません。

まぶたのしこりは何度も検査を行い肥満細胞が出てませんでしたので、レーザー治療を行いました。

同時に、他の7か所もの肥満細胞腫は手術で摘出を行いました。

 

10日後に、肥満細胞腫の傷の抜糸にお越しになった際の顔写真がこちら。

 

とても凛々しい顔立ちになりました!ほっぺの手術の傷もきれいに治ってますね。

 

レーザーの傷跡は小さくなりカサブタになっており、あともう少しでカサブタが取れて治りそうです。

問題は、目のしこりが肥満細胞腫だったのであれば、またすぐに再発してくる危険性があります。

病理検査の結果をドキドキしながら待ちました…

 

 

結果は、アポクリン腺腫という汗腺由来の良性腫瘍でしたので、肥満細胞腫ではなくてホッとしたところです。

さらに10日経ってお電話でまぶたの傷の状態を確認したところ、きれいな状態にまで治ったとのことでした。

 

今回は、まぶたに出来たかなり大きい、しかも嚢胞(液体をためた袋)状のイボにレーザーを使用してみましたが、非常にきれいに治ってくれて良かったです!!

 

※(参考):レーザーの過去ブログより

口の中のガン(口腔内腫瘍)へのレーザー治療

歯原性のう胞へのレーザーの応用

 

血尿を検知する猫砂『尿中ヘモグロビンチェッカー』

2022年01月28日 (金)

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

私としては久々のブログ更新になりました。

先日、ロイヤルカナンさんからフード以外の新製品が登場しましたので、そのお知らせをしたいと思います。

 

今回の新製品は、血尿を検知する猫ちゃん用トイレの砂なんですね~

これまでも猫砂で尿のpH(酸性・アルカリ性)を検知する商品などは売られてましたが、今回は”目に見えにくい血尿を早めに知る“ことができる商品の登場です。

ロイヤルカナンさんと言えば、猫ちゃんに多い下部尿路疾患(膀胱炎や尿路結石など)に当院でもよく推奨している『ユリナリーS/Oシリーズ』のフードを作っているメーカーさんです。

猫ちゃんのストレスって~『ユリナリーS/O+CLT』のご紹介

ロイヤルカナン『ユリナリーS/Oエイジング7+』新発売!

 

猫ちゃんは腎臓や尿路系の病気がとても多い動物なんですよね。

このことは猫の飼い主さんは皆さんよくご存知で、大変皆さん強い関心がおありなのは日々現場の獣医師としても感じております。

以前に、Makuake(マクアケ)というクラウドファンディングサイトで、トイレ砂で猫ちゃんの健康状態を知ることができる画期的な商品として、『しぐにゃる』という商品が登場した際も、480万円もの多額の資金を集めました。(現在は商品化され販売されております)

 

 

 

このたび、ロイヤルカナンさんから動物病院専用商品として、トイレに混ぜておくことで「血尿」を検知する『尿中ヘモグロビンチェッカー』という新商品が発売されました。

 

 

血液に含まれるヘモグロビンという成分がほんの少しでも含まれていると検出されるそうなので、目に見えないわずかな血尿を検知できるようですね。

5Lの水に血液をたった1滴混入したものでも反応するとのことなんで、検出感度としてはものすごく高いものと思われます。

血尿や膀胱炎で治療をした猫ちゃんで、一通りの投薬や食事療法で改善した後に自宅で1~2ヶ月経過をモニターするのに使って下さいとロイヤルカナンさんは推奨してますが、「過去に血尿や下部尿路疾患にかかったことのある猫ちゃんで、おしっこのにおいや色が気になった際に時々使ってみる」や、「療法食を変更した際にちょっと心配だなぁ…」というケースにも良いのかなと思います。

 

使用法は上記の通りです。

開封後は30日以内に使用する必要があることと、一度尿が付着してしまうともう再使用できないので、そこだけ注意が必要ですね。

詳しく知りたい方は、ロイヤルカナンさんの公式サイトに使用方法などをイメージしやすい動画がありますので、コチラからご覧くださいね。

 

商品価格は、1箱¥1,800(税抜)となっております。

販売方法は、動物病院でご購入いただくか、あるいはロイヤルカナンの公式オンラインストア「ロイヤルカナン ベッツホームデリバリー」でも購入できるとのこと。

(ですが、1/27現在:まだ販売準備中で欠品とのことです…。もしお急ぎで使ってみたいという方がいらっしゃったら、オークどうぶつ病院けやきの方に少しだけ在庫置いてます。)

WEBサイトからの購入では、「動物病院IDが購入する際に必要」となりますので、ご不明な場合はご来院かお電話にてお問い合わせくださいね。

 

※現在ロイヤルカナン ベッツホームデリバリーでは、全商品送料無料キャンペーンを3/31(木)11:30AMまで行っているそうなので、ぜひ気になる方はお1つからでもお試しいただければ良いかと思います。

猫の甲状腺のお薬『チロブロック錠』が新登場!

2021年03月02日 (火)

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

3月はQRコード決済PayPayで20%還元のキャンペーンを実施中です。(還元額には上限がありますのでご注意を)

オークどうぶつ病院でのお支払いも対象となりますのでどうぞご利用ください。

キャンペーンの詳細はコチラをご覧ください。

 

さて、高齢猫ちゃんに多い「甲状腺機能亢進症」という病気ですが、このたび猫ちゃん専用に開発された「チロブロック」という薬が登場しましたのでご紹介したいと思います。

 

猫ちゃんの甲状腺機能亢進症って何?と思われた方は、当院のアミカちゃんの闘病日記↓(過去ブログ)を読んでみてください。

(タイトルをクリックしていただければ、その記事へジャンプできます。)

「アミカの病気①~甲状腺機能亢進症・前編」→主に病気の症状を説明してます

「アミカの病気②~甲状腺機能亢進症・中編」→甲状腺の触診の方法と内科療法のお話をしてます

「アミカの病気③~甲状腺機能亢進症・後編」→外科手術の話をしてます

 

この薬は、元々人間用の製剤を割って処方していたのですが、とても苦くて飲ませにくく、猫ちゃんと飼い主さんの負担の大きい薬でした。

ですから今回の猫専用に開発された製剤の登場は、処方する私たち病院スタッフ、頑張って毎日投薬している飼い主さん、そして何より苦い薬を頑張って飲んでいる猫ちゃんの3者、みんなにとって嬉しい薬が登場しましたね!

最近出た薬の中でも、個人的には結構嬉しい新商品でした。。。

 

 

そのサイズ感の写真ですが、分かりますでしょうか?

とても小さい錠剤ですし、2種類の投与量サイズがあり、苦みを隠すコーティングがされてます。

割るととても苦いですので、そのまま飲ませましょう。

 

また、猫ちゃん専用に承認を取った薬ということは、安全性などもきちんと評価されてるということですので、そういった意味でも安心なんですね♪

現在投薬中の方は、徐々に切り替えを進めて行きますのでよろしくお願いします。

 

子猫の咳の原因は?・・・肺に寄生する虫『肺吸虫』

2020年03月23日 (月)

オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。

昨今はコロナウイルス感染コントロールのためのイベント自粛で、私たちが参加する勉強会も全て中止になる時代で…

しかし昨夜は、毎年春にあるロイヤルカナンさんのシンポジウムがウェブでライブ配信となりましたので、自宅で約4時間みっちりと勉強させていただきました。

いつもはバタバタ博多駅まで行くのですが、私たちにもついにテレワークです(^_^;

自宅でゆっくり視聴できて、夜遅くに帰宅しなくて良いので、これはこれで良いもんですね。

さて、今回のブログは、先日よりお越しの子猫ちゃんのお話です。

 

生後約半年の子猫ちゃんが「咳をする」ということで来院されました。

しつこい咳が出る以外は元気で食欲もあり、とても活発な猫ちゃんだそうです。

一般的に猫ちゃんの咳の原因は、猫カゼによる感染症やアレルギー性気管支炎(猫喘息)などが有名です。

その他にも心疾患や肺や気管支の腫瘍など様々なんですが、カゼも引いてないこんなに若い子猫の咳は珍しいなぁというのが第一印象で。。。

 

胸の横向きの写真です。○のところには、しこりがうつっています。

 

レントゲン検査を行うと、全体的に肺野が汚い。(あえて専門的ではない表現で書きますと)

○で囲んだ部分は、小さなしこりが肺にできているように見えます。

 

うーん…

高齢猫であれば、乳がんが転移したりしてできる転移性腫瘍を疑う所見なんですが、そんなわけないですし。

獣医師国家試験を受けてから十年以上経つ身ですが、なんとなく肺に寄生する寄生虫がいたような記憶を絞り出し、うんち検査も行ってみると

 

 

出ました!卵です!!!

これぞ肺に寄生する虫『肺吸虫』の卵です。よく見ると下側に蓋がついている。この蓋が肺吸虫の卵の特徴です。

子猫を苦しめていた咳の原因を、うんちの検査で診断するというなんとも不思議な体験をしました。

 

ベーリンガーさんの「犬と猫の寄生虫アトラス(非売品)」よりお借りしました。

 

レントゲンにうつっていた「しこり」は、肺吸虫の虫が入った袋(虫囊)でした。

この肺にいる親虫が卵を産卵すると、卵は気管を逆上って胃に入り、便から排泄されるのですから不思議ですね。

 

ベーリンガーさんの「犬と猫の寄生虫アトラス(非売品)」よりお借りしました。

 

不思議な生き物「肺吸虫」の生活環といわれる図を、ベーリンガーさんの「犬と猫の寄生虫アトラス(非売品)」よりお借りしました。

猫ちゃんにどうやってこの寄生虫が入って来るのかというと、川にいる淡水のサワガニやザリガニなどを食べて感染するのです。

ちなみに人間にも感染する寄生虫ですが、関東ではサワガニを食べる習慣がある地域があり、サワガニを食べて感染する事例が多いとか。九州ではイノシシを非加熱で食べて感染してしまう事例が多いとのことですから、O院長には十分に加熱するように言っておかねば。。。

 

それにしてもここは赤坂ですよ。福岡市中央区の都会のど真ん中ですから、なんでそんな寄生虫が!?

これはあとで飼い主さんに聞いた情報ですが、この猫ちゃんは、糸島市の雷山の山の中で保護したそうです。なるほど、納得ですね。

山の中の放浪生活で、子猫とはいえカニなんかを食べて食いつないでいたんだろうなぁと想像します。

 

肝心の治療はというと、通常の駆虫薬では落ちませんので、ドロンシットという注射薬で治療を行います。

 

 

注射後40日後のレントゲン写真です。

先ほどの治療前の写真と比べてもらうとよくわかりますが、○の部分にあったしこりはなくなり、全体的に汚かった肺の病変もきれいになりましたので、これで治療終了ですね。

飼い主さんの話では、あれだけ困っていた咳が注射翌日からウソのように止まったそうで、とても驚いておられました。

 

これからは、猫ちゃんの保護した場所なんかもよく聞いておかないといけないな〜と思った今日この頃でした。

猫の『トリコモナス』という寄生虫

2020年03月13日 (金)

オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。

一昔前のペットブームでは、ダックスやチワワ、トイプードルの子犬をペットショップで購入して飼い始める方がたくさんおりました。

それに代わって今は、ペットショップではワンちゃんではなく猫ちゃんを購入して来院される方が増えてきましたね。

 

ペットショップで売っている猫ちゃんは、いわゆる「洋猫」です。

最近では、スコティッシュフォールド・メインクーン・マンチカン・ベンガル。。。

色んなかわいい子猫ちゃんが来院するようになりましたが、それに伴い10年くらい前にはあまり見なかった感染症もしばしば出逢う機会が増えています。

 

先日、下痢(血便)で来院した猫ちゃんのうんち検査の映像です。

 

この「おしくらまんじゅう」状態のアメーバのような虫が、猫ちゃんの『トリコモナス』という寄生虫です。

これだけたくさん出るのはとても珍しいのですが・・・

少数検出される場合でも、猫ちゃんはひどい下痢に悩まされるのです。

(動画をよく見ると、さらに小さならせん状の細菌が走り回っているのも見えるでしょうか。

悪玉菌であるらせん菌がこれだけ大量に増殖していることから、腸内環境がすごく悪いことも示唆されます。)

 

猫のトリコモナスは学名「Tritorichomonas foetus」と言い、もともと日本にはいない寄生虫でした。

それが、海外からの猫ちゃんの輸入とともに入ってきたと言われています。

この寄生虫が厄介なのは、治療してもなかなか落ちないことです。

一般的に「メトロニダゾール」という抗原虫薬を投与するのですが、これがとても苦い・・・

猫ちゃんは苦いのがとても苦手なんで。。。投薬に失敗すると口の中が泡だらけになって、泡のよだれがつららのようにダラダラと…

この苦い苦い薬を頑張って飲んでも完全には落ちきらないことが多いので、私たち獣医師も非常に治療に苦労しています。

 

海外の様々な報告で「ロニダゾール」という薬が効くという記載を見かけるのですが、この薬は日本では手に入らず、輸入したとしても、もともとが鳥用の薬で粉の量がとてつもなく多いということでなかなか現実的には使えません。

 

しかし、抗原虫薬が苦くて飲めないケースでは、過去に仕方なく違う抗生物質を投与したケースがありましたが、それでも改善しましたので、「①下痢に対する対症療法をしっかりやること」と、最近では新発売のヒルズ『腸内バイオームなどのフードを使って「②腸内環境を整えること」も寄生虫の活動を抑え込むのに大事なのかな〜と色々と考えて取り組んだりしているわけです。。。

フィラリア予防

2020年03月01日 (日)

こんにちは😄
動物看護師の深町です♪(´▽`)

3月になりましたね🌸
今年の冬は暖かい日が多かったような気がします。
このまま暖かくなると例年よりも早く蚊が飛び始めるかもしれません>﹏<

\フィラリア予防しなきゃだね!/

蚊が飛び始めてから一か月経つまでにフィラリアの検査をしてお薬をスタートできるようにしましょう👍

\蚊が出てきてすぐじゃなくていいのー?/

なぜ一か月の猶予があるのか?

詳しくはこちらをご覧ください😁
イヌネコフェレットのフィラリアについて〇

ダニ予防をしっかりと

2020年02月27日 (木)

こんにちは!

田中です。

 

先日、今年一番寒い日に、ハウステンボスに遊びに行ってきました😄

 

 

ハウステンボスの近くにはよく行くのですが、中のイルミネーションを見たことがなかったので、すごく感動しましたよ🤩

 

 

 

 

朝一はすごく寒かったのですが、夜は風もなくなり、ゆっくり楽しめました🤩

 

 

さて本題です。

最近は、新型コロナウイルスの話題でいっぱいですね。

(そんな中、人がいっぱいの観光地に行ってました💦)

感染者数が日に日に増えていますが、皆さん予防は徹底されてますか?

外から帰ったら手洗いを念入りにすること、十分な睡眠、バランスの良い食事などが大切なようです。

怖い病気です。きちんとした予防を徹底しましょう!

 

怖い病気といったら、SFTS(重症熱性血小板減少症)もですよ☝

2013年頃にニュースなどで話題だった、ダニ媒介の病気です。

最近はあまり話題になってないですが、毎年感染者や感染動物はいるようです。

特に猫での感染数が多く、致死率も高いようです。

もちろん犬や人にも感染し、重篤化したら亡くなることもあります。

冬場でも感染することはあるので、しっかりと予防しましょう!

 

食べちゃダメ🙅‍♂️~おもちゃなど~

2020年02月24日 (月)

こんにちは😊
動物看護師の深町です(❁´◡`❁)

前回までは中毒症状が出るものを紹介していました。
前回までに紹介したもの以外にも中毒症状を引き起こすものは多くあります。
今回は物理的に消化器に影響を与えるものでよく聞くものをご紹介いたします。

\今日が最終回みたいだよー!/

目次
・チョコレート🐶(🐱)
ネギ類🐶🐱
キシリトール🐶
ブドウ🐶
ユリ🐱
物理的に消化器に影響を与えるもの🐶🐱←今回はコレ!

◎物理的に消化器に影響を与えるもの◎
異物の形状や素材によっては消化管の通過障害等を引き起こします。
多くは嘔吐、食欲不振、腹痛などの症状が出ます。

・糸やひも状のもの

太いひもだけでなく細い糸やちぎられ紐状になったもの等も危険です。
紐状のものは塊になって詰まってしまうだけでなく、腸管を締め付けてしまい穴が開いたり、血行不良で壊死してしまうこともあり非常に危険です。
なかには誤飲したひも状のものが舌下に絡まっていることのあります。
おしりから食べてしまった紐状のものが出てくることがありますがどこで詰まっているかわからないので絶対に引っ張らないでください。
お尻から出た紐が何かに引っかかりそうな時はハサミ等で出てる部分だけ切ってください。

・先のとがったもの

小さな画鋲や料理等に使ったいいにおいのする竹串や骨などを誤飲することが多いです。
尖った部分が胃や腸に穴を開けたり、粘膜を傷つけたりします。

・消化されないものや大きな塊のもの

食道、胃、腸で通過障害を引き起こします。
この画像のようなネズミのおもちゃの誤飲は多いです。
おもちゃや布類だけでなく、梅干しの種などの小さなものでも動物の大きさによっては詰まってしまいます。
また、消化できるものであっても十分に咀嚼せずに飲み込んでしまうと食道に詰まってしまうこともあります。

いずれの場合においても消化器粘膜を傷つけたり、詰まりやねじれを引き起こし命を落とす危険性があります。
このようなものを食べてしまった可能性がある場合は出来るだけ早く受診しましょう。

体の大きさによっては何も影響がなく便として排出されることもあります。
便が出た際は中身に誤飲したものが混ざっていないかなどの確認をすることも大切です。


今回で食べちゃダメシリーズは最終回です。
これまでに上げたもの以外にも危険な物や中毒性のある物は多くあります。
素早い処置が大切なので少しでも怪しければ病院に相談・受診しましょう。
その際はいつ、何を、どのくらいの量食べ、現在どのような状態なのかを伝えることが重要です。
来院時は食べたものの破片や同じものを持ってきていただけると良いと思います。

\飼い主さんが僕らを守ってね♡/

食べちゃだめ🙅~ユリ~

2020年02月06日 (木)

こんにちは(‘ω’)/
動物看護師の深町です🐾

今回は人の食べ物ではないですが、中毒性のある植物のユリについてお話します。

\どれが食べちゃダメな植物かなんてボクわからないよ…/

食欲旺盛のマイケル。
きっとそばにあったら食べちゃうかも💦
そうならないようにわたしたちが気を付けなければなりません。

では食べちゃダメ第5弾です!

目次
・チョコレート🐶(🐱)
ネギ類🐶🐱
キシリトール🐶
ブドウ🐶
ユリ🐱←今回はコレ!
物理的に消化器に影響を与えるもの🐶🐱

◎ユリ

対象動物:

原因物質:正確な原因ははっきりしていません。
死亡する可能性が高い中毒です。
ユリ科のものを摂取することにより中毒性の尿細管上皮障害になり、多尿・嘔吐を引き起こします。
それにより重度の脱水になり腎障害を引き起こします。

ユリの中でも特にユリ属のもの(*テッポウユリ、*オニユリ、*コオニユリ、*鹿の子百合、*キスゲ、カサブランカ、ヤマユリなど)は植物の一部(花びら、葉、茎、花粉など)を少量摂取したり、ユリが入っていた花瓶の水を舐めてもしても中毒を引き起こします。
(*は特に猛毒のもの)

症状:目に見える症状は12時間以内に発症することが多いです。
症状は嘔吐、食欲不振、沈うつ、多飲、多尿

初期症状→まず嘔吐が症状として出て、4~6時間ほどで一旦治まります。
嘔吐等の消化器症状が治まって、治ったように見えますが、体内では吸収された有害成分が腎臓を障害し続けています。

その後の症状→接種後24~96時間以内に腎不全を引き起こします。
最悪の場合完全に腎臓の機能が停止し、無尿症状を引き起こし死に至ります。
腎臓の機能が停止する前に処置することが大切になります。

ほんの少しでも接種した場合でも危険性が高いです。
ユリの近くをうろうろしていたりして少しでも疑惑があるのならすぐに病院に連れていきましょう。

また、ユリ以外にも中毒症状を引き起こす植物は多くあります。
お部屋に植物を置くときには事前に調べておくとよいと思います!

\ユリ、ダメ絶対!/