レーザーでイボを取る

2023年02月16日 (木)

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

先日久々にホームページのカウンターを見て気づいたんですが、当院サイトリニューアルして以来、『100万人の訪問者数』を達成しておりました!

毎日平均700人もの方がご覧になってくださってるようで、大変ありがたいことです。。。

そんな中、過去にレーザー治療のブログをいくつか書いて来てました。

全身麻酔をかけずに腫瘍の治療が出来るということで、その記事を見つけてお越し下さる方もいらっしゃいます。

 

その中の1頭、先日お越しいただいた12歳のプードルちゃんのケースです。

5年前から小さなイボを見つけてたんですが、最近トリミング後etc..に出血をすることが多くなった。ここのところどんどん大きくなってるので、レーザーで取って欲しいとのことでした。

 

診せていただくと、しこり自体はさほど大きくないのですが、出血して周りの毛とくっついて大きなカサブタが乗っかっていました。

カサブタをバリカンで周囲の毛と一緒に刈ったらこんな感じでした。

 

 

小さなしこりが複数認められ、そこから分泌物が出たり出血したりを繰り返し、カサブタを作ってしまうようですね。

おそらく皮脂腺の良性の腫瘍だと思われます。

 

出来ている箇所は、左の腰~お腹の辺りでした。(顔の周りとか本人がさほど嫌がる場所ではありません)

高さのない小さなしこりでしたので、そのまま外来中にレーザーを行いました。

とてもお利口さんで、じーっとしてくれてましたのですぐに終わりました。

どんな治療法か、興味を持たれた方は、過去ブログの記事を読んでみてください。

 

 

終わったところの仕上がりです。

見かけ上は、焦げたようになってますが、腫瘍の根本はわざと「炭化」といって低出力で焼いて仕上げますので、終わった後はカサブタのようになります。

2週間後に様子を見せに来ていただいた時の写真がコチラ↓

 

なめることもなく、「全く気にしてませんでしたよ」とのことでした

 

よーく見ると焼いた跡のようなものが若干ありますが、ほぼほぼきれいになくなってますね。

どうしても深部を根こそぎ取っているわけではありませんので、そこからまた出てくる可能性はゼロではないですが、出血したり気にしたりしていた症状はすっかりなくなりましたので、これで治療終了です。

 

腫瘍のタイプや大きさによっては、レーザーをせずに外科手術をした方が良いものもありますし、出来ている場所が顔や目のふちなどであれば、鎮静麻酔を使わないと難しいこともありますし、あえて鎮静麻酔を使って怖い思いをしなくていいように配慮することもあります。

ワンちゃんの性格に応じて…あるいは持っている持病によって…などなど、こういった治療が向いてないケースもあるので、本当にケースバイケースなんですよね。

ご興味を持たれた方は、一度ご相談にお越しください。

母校・山口大学へ

2023年02月06日 (月)

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

先日のお休みで、久々に母校 山口大学・動物医療センターへと行ってまいりました。

コロナ禍になる前に訪れて以来でしたから、かなり久々でしたね。

 

 

昨年、患者さんを紹介して治療をしてもらってましたので、そのお礼もかねて。。。

その患者さんというのは、脳腫瘍のワンちゃんでした。

 

脳腫瘍という病気は、犬にも猫にもありますが、治療が難しい病気の一つです。

脳の表面にできた場合は、頭蓋骨を開けて摘出手術を行うのですが、今回のケースは脳の一番底の部分にできた腫瘍でした。

 

MRI 画像です。

脳の一番深いところに腫瘍があり、手術でアプローチするのは難しいケースでした。

そこで選択したのが『放射線治療』という治療法です。

 

放射線治療器は、私が大学在籍中の頃からあった設備なんですが、実は数年前に新しくなり、ものすごい治療器が導入されたんですね。

今回の訪問は、その治療設備を見せてもらうのも目的の一つでした。

 

 

すごく大きな機械と広い専用の治療室ですね。

以前からあった放射線治療器は、レントゲン撮影の機械の延長線上にあるもので、放射線を腫瘍にあてる際に、表面はより強いパワーで照射され、深部に行くほど効果が弱まってしまうものでした。

ですから、皮膚などの表面臓器には放射線障害が起こりやすく、深いところにある腫瘍に対してはどうしても効果が出にくいという弱点がありました。

 

今回の新しい放射線治療器は、リニアアクセレーター(リニアック)という治療器で、深部の腫瘍に対してもピンポイントで強い線量の放射線を照射できる高度な治療器です。

しかも、IMRT(強度変調放射線治療)と言うのですが、撮影したCT画像をもとに、患者さんの周りをグルグルと回転しながら、腫瘍組織には強い線量を、正常組織にはごく少ない量の放射線しか当たらないようコントロールされた照射が可能になる最新機能を備えてます。

 

矢印のところから放射線が出るのですが、それがグルグルと周囲を回転して腫瘍のみを狙って照射するんですね〜。すごい!

 

この機能は人間の病院でも導入しているところは多くないそうで、本当にすごい治療機器が入ったものだと感心させられます。

その素晴らしい治療器と、山口大学の先生方やスタッフの方々のおかげで、その患者さんは発作を一度も起こすことなく、もうすぐ診断日から1年が経とうとしてますが、とても元気に過ごせているわけです。

でも一番頑張ったのは、山口まで週2日で5週間も頑張って通った飼い主さんですよね。。。

大学に行く直前は、発作が毎日たくさん出て止まらなくなり、あのまま止まらなければ助からないというような状況だったのに、頑張って通った甲斐がありましたね♪

このまま、穏やかな日々が長く続くことを願っております。

 

 

さてさて、大学の周りの懐かしい風景を見ながら帰途につきます。

せっかくですから、山口のオススメを一つご紹介して終わりにしたいと思いますね。

山口に来ると必ず買って帰るのがコチラ。

 

 

外郎(ういろう)といえば…名古屋ではなく「絶対に山口ですよ!!!」

という私の大好物、『生絹(すずし)豆子郎

いわゆる生外郎で日持ちが3日しかないので、お土産としてはちょっと使いにくいのですが、とても美味しいので、山口に立ち寄られた際はぜひお試しくださいね。

新しい歯周病治療器『Pidi』のデモ

2022年12月24日 (土)

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

高齢のワンちゃんの8割は歯周病を持っていると言われますが、その根本治療であるスケーリング(歯石除去)は麻酔が可能であればベストな治療となります。

しかし、心臓病や腎臓病などの持病を持っている子も多く、ケアしてあげたいのにリスクがあるのでなかなかできない…というケースはとても多いかと思います。

そこで、新しい「麻酔を使わない」体にやさしい治療選択肢として、『プラズマ治療器 Pidi』という機器のデモを近日行うことになりました。(詳しくはメーカーサイトへ)

 

 

おそらく年明けまでの2週間ほどになるかと思いますが、オークどうぶつ病院けやきでお試しで使わせていただくことになりました。

どのくらい効果がありそうか、私どももまだ分かりませんので、試しに使ってみて検討しようと思っております。

もしご興味がある患者さんがいらっしゃったらお声掛けください。

 

腎臓への”黄色信号”を知る~犬猫用『FGF23』測定のご紹介

2022年06月28日 (火)

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

以前に、慢性腎臓病を早期発見できるかもしれない検査項目『SDMA』のお話をブログでしました。

今回も、新たな腎臓の外注検査『FGF23』のお話をしたいと思います。

ちょっとマニアックなお話なので、すごく興味がある方だけお読みいただければ幸いです。

 

検査をイメージしやすいものとして私が勝手に作りました。富士フィルムさん公認のものではありませんので。。。

 

富士フィルムさんが検査を実施している『FGF23』という検査項目を、最近私も採用して測定を始めております。

これは何なのかというと、体の中に「リン」という物質が増えて腎臓に負担が掛かりそうになると、骨から分泌される物質がFGF23です。

FGF23は、①腎臓に働きかけ、リンをたくさん外に出さねば!あるいは②腸管に対しては、リンを吸収しないようにせねば!という2つの働きをすることで、血液中のリンを上昇させないようにするんですね。

 

難しいことはさておき、何のために役に立つのか?というところを簡潔に説明すると、

 

1.腎臓病の早い段階で上がってくるので、腎臓病の早い段階で「今後、腎臓病の進行に注意した方が良いんだ」という目印となる。

 

2.今の食事内容が問題ないかどうか?腎臓病用の療法食に変えた方が良いのか?

あるいは変更した後に、変えた効果が出ているのか?という食事を評価する指標となる。

 

大きくはその2つの意味で役に立つ検査だと思います。

1.に関しては、FGF23が腎臓病の予後(将来の見通し)に役に立つことが証明されています。

2.に関しても、FGF23が上がっていれば腎臓病用の療法食にすぐにでも変更した方が良いという判断になるし、療法食に変更することで数値が下がることもハッキリしているので、今の食事内容が適切かどうかの判定材料にもなるかと思います。

 

この辺りはとても難しいお話なので、このFGF23に関わる機構の1つ「クロト―遺伝子」というものを発見した腎臓内科医の黒尾誠先生の新書を読みました。

 

 

衝撃のタイトルでした!「老化加速物質=リン」「腎臓(リンの排出)が寿命を決める」とは。。。

読んで非常に勉強になりました。

腎臓への注意信号、黄色信号とはまさに納得の表現でした。

ヒトの医学においても、『FGF23』という項目は測定ができるそうなのですが、あくまでも腎臓病の検査としては保険適用外(自費診療)だそうです。

黒尾先生は、もし健康診断としてFGF23が測定できるようになれば、「早くから気づいて食事内容を見直すなどの対処をすることで、腎臓が悪くなって透析が必要になる患者さんがかなり減るんじゃないか」と仰っているわけですね。

 

そんなステキな検査が動物でも測定できるのですから、富士フィルムさんには感謝です。

動物も腎臓病は非常に多く、私たちの診察の中でも「腎臓が悪い子の点滴治療」はかなりのウェートを占めます。

特に猫ちゃんの腎臓病の多さは皆さんもご存知の通り。

こういった点滴治療に通うことになる動物たちを少しでも少なくし、早め早めに対処が出来ればまさに理想的ですよね♪

 

当院の看板犬、「ぐり」「ぐら」ちゃんたち兄弟も腎臓に弱点があるようです。

ここ最近は腎臓の標準的な血液検査項目に加えて、定期的にこの『FGF23』をモニターしながら、今の食事内容で大丈夫かどうか?警告信号は出てないかどうか?をしっかり監視しております。

 

とても難しい内容でしたね。。。

もしとことん突き詰めて検査などをご希望の方がいらっしゃれば、相談していただければ検査のメリットなどをお話いたします。

まだ症例報告や学術論文なども多くない検査ですので皆さんにオススメしているわけではありませんが、ご興味持たれた方はぜひお声かけください!

 

ネコちゃんのまぶたの大きなイボ(レーザー手術例)

2022年03月02日 (水)

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

3月になりましたね。4月から本格的に病院が混み合う前にフィラリア検査を済ませたい方は、今月からフィラリア検査と予防薬の処方が可能です。(健康診断の血液検査も同時に行うことも出来ます)

また、動物管理センターに確認すると、狂犬病の「注射済票」も本日付の注射から新年度(令和4年度)の済票が発行されるとのことでしたので、狂犬病接種も同時に早めに済ませていただくことが可能です。

外来が落ち着いてる今の時期に済ませたい方はどうぞお越しくださいませ。

前置きが長くなりましたが、今回はレーザー手術器を使って目のイボを手術した猫ちゃんのケースをご紹介します。

 

目の大きなイボでお困りのネコちゃん。。。

飼い主さんがブログを見てレーザーで治療ができないか?とお越しになりました。

かなり大きなイボ!本人もイヤだったことでしょうね。

 

手術日当日の顔写真です。

上まぶたから大きなイボがぶら下がり、視界を邪魔しておりました。

 

診察時に針を刺して細胞を取る検査を行ってましたが、中には液体がたまっており、悪性の腫瘍を疑う細胞は取れませんでした。

もしこのイボを完全に切除をするとなると、まぶたの大部分を切除することになり、目の形が大きく変わってしまう可能性があります。

 

そこで、レーザーでやってみましょうとお話しました。

体にできたイボの場合は全身麻酔を必要としないことが多いのですが、今回は目のイボなので全身麻酔で行いました。

まず、袋状になっている膜に穴を開けて、中身を出します。

 

中には茶色い液体がたまっており、しぼり出すとペチャンコになりました。

 

しぼんだ袋の部分をレーザーメスで切り取っていきます。

下の眼球が熱でダメージを受けないよう、少しずつ冷やしながら進めます。

上の包んでいる袋を切除後、まぶたに残る分泌腺の細胞に対しては、レーザーで蒸散・凝固処置を行いました。

治療終了後の写真がこちらです。

 

治療が終わった段階では、袋の底にあたる部分が黒く凝固されているのがわかりますね。

 

実は、気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、目の下のほっぺに白いしこりがありますよね。

この猫ちゃんは、体にもたくさんの同様のしこりが出来ておりました。

細胞を取る検査を事前に行っており、そのたくさんのしこりは肥満細胞腫という腫瘍だと分かっておりました。

 

肥満細胞腫は周りにタコ足を伸ばすように広がる特徴の腫瘍ですので、レーザーでの治療は向いておりません。

まぶたのしこりは何度も検査を行い肥満細胞が出てませんでしたので、レーザー治療を行いました。

同時に、他の7か所もの肥満細胞腫は手術で摘出を行いました。

 

10日後に、肥満細胞腫の傷の抜糸にお越しになった際の顔写真がこちら。

 

とても凛々しい顔立ちになりました!ほっぺの手術の傷もきれいに治ってますね。

 

レーザーの傷跡は小さくなりカサブタになっており、あともう少しでカサブタが取れて治りそうです。

問題は、目のしこりが肥満細胞腫だったのであれば、またすぐに再発してくる危険性があります。

病理検査の結果をドキドキしながら待ちました…

 

 

結果は、アポクリン腺腫という汗腺由来の良性腫瘍でしたので、肥満細胞腫ではなくてホッとしたところです。

さらに10日経ってお電話でまぶたの傷の状態を確認したところ、きれいな状態にまで治ったとのことでした。

 

今回は、まぶたに出来たかなり大きい、しかも嚢胞(液体をためた袋)状のイボにレーザーを使用してみましたが、非常にきれいに治ってくれて良かったです!!

 

※(参考):レーザーの過去ブログより

口の中のガン(口腔内腫瘍)へのレーザー治療

歯原性のう胞へのレーザーの応用

 

ハムスターのレーザー手術

2021年09月28日 (火)

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

最近、なぜだか両院ともにハムスターの患者さんがすごく増えましたね。

私も一人のハムスター飼いとしては嬉しいのですが、やはり可能な検査や治療が限られるので難しさを感じる毎日です。

なかなか犬猫のように満足のいく診断・治療が出来ないことも多いのですが、それでも出来ることを少しずつ増やそうと尽力しております。

 

小さな動物ですから、手術となるとなかなか難しいのですが、先日レーザー手術器が非常に役に立ったケースをご紹介します。

ハムスターには頬袋という袋が左右にあって、いっぱい食べ物を詰め込みます。

その頬袋が時々ひっくり返って出て来てしまうことがあります。

頬袋脱(ほおぶくろだつ)』というその病気ですが、原因は感染(膿瘍)だったり腫瘍だったり…これといった原因もなくただ反転してしまうこともあるんです。。。

 

今回のケースは左の頬袋が飛び出していたジャンガリアンの「メメちゃん」です。

脱出した頬袋の先端を触ると、1cmくらいのしこりが出来てました。

とりあえず一度口の中に戻してみたのですが、左のほっぺを必死にかいていて違和感が強そうです。

頬袋脱はいかなる原因であれ、手術で切除するのがベストと考えられています。

飼い主さんが手術をご希望されましたので、ガス麻酔をかけます。

 

 

麻酔が効いた状態で、左頬袋をもう1回外に反転させました。その頬袋の先端部分に硬いしこりができておりました。

 

 

口の中の組織は、切ると出血が多い場所です。

ハムスターのような小さな体の動物にとって、わずかな出血も命取りになる危険性があります。

そこで今回切除に使ったのが半導体レーザーの「レーザーメス」です。

ワンちゃんの口の中の腫瘍切除に使用した例は過去ブログでご紹介してましたが、出血とダメージの少なさには定評があります。

 

レーザーメスで切除をすると、出血はほぼありませんでした。

そして術後の熱によるダメージや痛みなどもあまりなく、動物への負担が少ない手術が可能となります。

飛び出した頬袋を全周切除が終わった摘出直後の写真です(↓)

※小さな写真で掲載してますので、拡大して見たい方は画像をクリックしてください。

 

写真では、口の周りに血液がついてますが、これはピンセットでつまんだところから出血したものです。

切りっぱなしの状態ですが、切除したところからは全く血は出ませんでした。

 

 

溶ける糸で口の中を数か所縫合し、手術は無事に終了しました。

麻酔もすぐに醒めて、術後短時間で元気にお家に帰りました。

 

 

2週間後に様子を見せに来てくれたんですが、とても元気で頬袋の縫った場所もきれいに治ってました。

飼い主さんの話では、帰宅後すぐにご飯も食べれてとても元気に過ごせたとのこと。

レ―ザーの良いところは、出血なく切除できてしかもダメージが少ないことですね。

 

 

病理検査の結果は『毛芽腫』という良性腫瘍でしたので、今回の切除で無事治療完了です!

元気な姿を見せにきていただきありがとうございました!元気そうでホッとしました(^_^)

 

頑張りました!

 

口の中の珍しい病気「歯原性のう胞」へのレーザーの応用

2020年11月20日 (金)

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

前回のブログでは、口の中のガンに対してレーザー手術器を使用したケースレポートをご紹介させていただきましたね。

早速ブログを見て来られて、治療を開始したワンちゃんもおりますが、あくまで根本治療ではなく少しでもQOLを改善したいという思いで行っている治療であることを再度お伝えしておきます。

今回は、同じく口の中にレーザー手術器を使用した珍しい病気の治療編をお送りします。

 

先日偶然に口の中にしこりを見つけたチワワの大吉ちゃんです。

いつも何をするにも嫌がったり怒ったりせず、目が合うと必ずしっぽを振ってくれる明るいワンちゃんです!

上の前歯の位置にやや黒っぽく見えるしこりがありました。

写真は麻酔下にてフラッシュ撮影しておりますので明るく見えますが、実際は黒ずんだしこりのように見えました。

 

麻酔をかけて精査したところ、透き通って見えますので液体が貯まっているのかなと細い針を指すと透明な液体が抜けてぺちゃんこになりました。

 

液体がたまっているということは「のう胞」といって袋の中に水がたまる構造の病変のようです。

そのままにしておくとまた水がたまって膨らんできますので、一部外側ののう胞壁を切り取りました。

 

さて、どう治療しましょうかね。。。

おそらく内側には水分を分泌する細胞があり、表面の穴がそのままふさがるとまた同じように水ぶくれが再発しそうです。

そこで、内側を裏打ちしている内膜をレーザーで蒸散・凝固してみました。

うまく行けば分泌細胞が死んで水分の分泌が止まり、組織が再生すればきれいに治るかなーと考えました。

中は大きな空洞となっており、その中にレーザー器具を入れてあちこちくまなくレーザー凝固しました。

 

ちょっと痛々しい写真ですよね。

術後はしばらく口元を触るとちょっと怒ってましたが、ご飯はしっかり食べて元気に過ごせましたよ。

3週間後に再診に来ていただいた時にはいつもの優しい大吉ちゃんに戻って、口の中もあんぐりとじっと観察させてくれるようになりましたね。

その時の写真がコチラです↓

 

とてもきれいに治りました。

念のため悪いものじゃないかどうか調べるため、切り取った外側の膜を病理検査に送ってました。

悪いものじゃなくて一安心♪ きれいに治りましたのでこれで治療終了です!

 

歯根膜などから発生する歯原性のう胞は、人ではたまにあるケースですが、犬では非常にまれな病気です。

治療としては、のう胞を袋ごと摘出するのがセオリーなわけですが、後々調べてみると、過去には今回の治療と同様にレーザー蒸散した報告もあるようですね。

何年やってても見たことないような病気や症状は来るもので。。。本当に毎日が勉強ですねぇ…

 

口の中のガン(口腔内腫瘍)へのレーザー治療

2020年11月12日 (木)

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

今回のブログは、ワンちゃんの口の中にできる悪性腫瘍(ガン)に対して、レーザー手術器を使用したお話をしたいと思います。

 

口の中にできるガンは比較的多く、いずれも局所浸潤(その場で奥に奥に広がっていく性格)が強いです。

最も悪い性格の悪性黒色腫(メラノーマ)は肺などに遠隔転移をすることもありますが、扁平上皮癌や線維肉腫といったタイプの腫瘍は、転移をしにくい代わりにジワジワと口の奥の深部に広がっていきます。

こういった口の中のガンに共通するのは、最終的には口の中の痛みや出血がひどくなり、お腹は空くのにご飯が食べれなくてどんどん衰弱していく…というとても残酷な病気なのです。

 

古くから現在に至るまで、口の中のガンに対しては「①顎の骨ごと大きく切除する」+「②術後に放射線治療を行う」or「③術後に抗がん剤を投与する」というのがセオリーです。

しかし、高齢なので大きな侵襲を伴う手術や毎回麻酔をかける放射線治療が現実的に難しい場合、あるいは体力的に術後のダメージが心配で…と飼い主さんが積極的な手術や放射線治療を希望されない場合がとても多いと感じます。

 

口の中にしこりができた場合は、まずどんなタイプの腫瘍なのかを調べるために、一部切り取って病理検査に出す必要性があります。

その際に私は、口の中にも以前のブログでご紹介したイボ取りと同様の蒸散・凝固処置を行っています。

(口の中はイボ取りとは違って全身麻酔が必要となりますが。。。)

 

すぐにまた大きく増殖してしまう場合も多いのですが、不思議とその後再発しないケースなんかもあったりするので、レーザー蒸散をすることの一定のメリットは感じております。

 

こんな子もいました。

口の中に『悪性黒色腫(メラノーマ)』ができたワンちゃんです。

左の上顎、犬歯〜奥歯にかけて黒いしこりで覆われています。

 

組織を取って病理検査に出して、良性か悪性かを調べます。

そのために全身麻酔をかけて切除を行い、その切った歯茎の部分にレーザーで蒸散・凝固処置を丁寧に行いました。

処置後の写真です。腫瘍があった場所が広範囲に炭化しています(焦げたようになっています)。

腫瘍を摘出後、残った粘膜を丁寧にレーザー凝固しました。 先程の写真では見えなかった犬歯や前歯、奥歯が見えるようになっています。

 

ちょっと痛々しく見えるかもしれませんが、処置後のワンちゃんは意外にも痛みはさほどでもなく、スムーズに食事を摂れることが多いです。そこは、レーザーによる鎮痛作用のお陰なのかもしれません。

 

その処置から7ヶ月経過後の、同じワンちゃんの口の中の写真がコチラです。

ホントかな?と思うかもしれませんが、正真正銘同じワンちゃんの処置後7ヶ月後の写真です。

 

ウソのようにどこにも腫瘍らしきものが見当たりません。。。

この子は、処置後に抗がん剤やその他の薬やサプリなども一切処方してないのに!です。

本当に悪性腫瘍なの??と疑われそうですから、病理検査の結果も載せておきます。

 

たまにこういったケースがあるからレーザーは良いなと思います。

もちろんメラノーマという腫瘍は、ものすごく増殖が早いものが多く、見つかった時点ですごく大きくなってしまっているような場合もあります。

そういった場合は、いくらレーザーで処置したからといってもすぐに再発してあっという間に増大してしまうことが多いのも事実です。

メラノーマにはすごく大人しいタイプのものも混ざってるのかな…という印象を抱くことがありますので、たまたまそういったタイプの初期病変であればこのように上手くいくのかもしれません。。。

もしかしたら、ガン細胞の親分である「がん幹細胞」にダメージを与えられたのかな?

あるいは、ガン細胞を壊すことにより、周りの免疫細胞にこんなやつがいるぞ!とお知らせをして、やっつけろ!とガン免疫細胞を活性化することが出来たのか…

うまくいった子の体内でどういったことが起きたのかは分かりませんが、たまにこういうケースもあるんです。

 

他の口の中の腫瘍の場合でも、大きく喉に増殖して気道を塞いでしまい、息苦しさを感じていたワンちゃんにも何度かレーザーで切除後に蒸散・凝固処置をしたケースがあるのですが、数回処置を行った後に大きくなるスピードが落ち、しばらくいい状態をキープできた子なんかもいました。

 

積極的に完治を目指すことが叶わないとなっても、本人のQOLを少しでも改善できるように役立ってくれると良いなと日々色々と考えながら治療を行っております。

今日のブログは長く難しくなってしまいましたが、気になった方は診察時にでもお尋ねくださいね!

 

レーザー手術機器がバージョンアップしました。

2020年09月18日 (金)

オークどうぶつ病院けやき 前谷です。

導入から1年経ちました、飛鳥メディカルさんの半導体レーザー「D-Lase V20」ですが、先日バージョンアップ作業に出しまして、作業が完了して戻ってきました。

できることが大きく変わったわけではありませんが、椎間板ヘルニアや関節炎などで患部にレーザー照射をする際に、より細かな条件設定が組み入れられ、さらに効果的な治療が可能となりました。

元々飛鳥メディカルさんには、とても評判の良い治療専用のレーザー治療器が別にあるのですが、その仕様に近いレベルになったのです。

 

例えば、椎間板ヘルニアの子にレーザー治療を行う場合、

プログラムの「慢性疼痛」を選択

体重を選択

その子に合った条件がプログラムされ、準備完了!

 

このように、治療内容や体重で細かく条件設定が可能になりました。欲を言えば、毛色や犬種などもっと細かい設定があればなお良いのですが・・・

毛の黒い犬種はレーザー光の感受性が良く熱がることも多いので、その場合は自分で設定した条件に適宜変更して治療を行っております。

椎間板ヘルニア治療のレーザーは、劇的な効果が期待できるわけではありませんが、患部を温めレーザーの効果で血流を改善し、炎症や疼痛を和らげてあげられますので、薬と安静だけの時よりもプラスアルファの効果を実感できるワンちゃんも多いものです。

 

最近どんどん増えてきているレーザーの使用症例は、ガンの動物の治療オプションとしての使用です。

小さなイボとりのレーザー蒸散は以前のブログでご紹介しましたが、最近はもっと大きくなった腫瘍に対しては、レーザー凝固という治療もしばしば行っています。

レーザー凝固とは、広拡散プローブという特殊な器具で腫瘍内にレーザーファイバーを穿刺し、腫瘍の内部でレーザーを照射するという治療法です。

レーザーを穿刺・照射された組織では、下の写真のような凝固巣ができます。(写真は鶏肉で照射した断面写真です)

矢印の方向から広拡散プローブでレーザーファイバーを穿刺してます。

 

中心部は黒く炭化し、さらに周囲は白くタンパク変性を起こしています。さらにその周囲は肉眼的には変化はありませんが、実は熱による腫瘍細胞へのダメージ巣、さらにその周囲にはレーザー光自体の作用による免疫細胞の活性化や血流改善などが重なるわけです。

ガン細胞自体にダメージを与え、その壊れたガンの断片が飛び散って、それを認識する自分自身のガン免疫を動かしたいという目論見の治療となりますので、動物自身の免疫力を上げる注射やサプリメントの併用などもご提案しております。

この小さな凝固巣を腫瘍内部にたくさん作ってあげることで、自分自身の免疫力などにもよるのでしょうが、上手く行けばガンが小さくなっていくのです。

表面のガンには局所麻酔で行うことも可能であり、悪性の口腔内腫瘍などでは全身麻酔下で行っております。

 

また、手術が難しい肺の腫瘍や腹腔内の大きな腫瘍などの場合は、以前のブログでご紹介したマイルドレーザーサーミアという温熱療法でガンの休眠療法(本人の生活の質QOLを改善して、ガンと付き合いながら元気に過ごす!)も行っております。

 

手術中のレーザーメスや血管シーリング(縫合糸を使わずに血管を切断)などなど、レーザーでできることは他にもたくさんあり大いに助けられているわけですが、さらなる改良・バージョンアップを重ね、ますますできることが増えていくことをぜひ期待したいですね!

SDMAは健康診断としても最適な検査です!

2020年05月25日 (月)

オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。

慢性腎臓病を早期に診断できる検査『IDEXX SDMA』ですが、以前のブログでオークどうぶつ病院両院で1月末より院内で検査ができるようになったことをお知らせしておりました。

 

IDEXXさんからとてもよく出来たガイド本をいただきました。

 

 

今回は私のケースレポートを1つ。実はこういったケースもあるんですよ。

 

もしSDMAを測定してなければ、「全然問題ないですね~」で終わってたかもしれません。。。

 

従来、腎臓が悪いかどうかを血液検査で測定する場合、BUN(尿素窒素)、CRE(クレアチニン)、P(リン)の3項目を調べます。

今回なぜSDMAまで測定したのかというと、明らかに説明のつかない多飲多尿(水をがぶがぶ飲んで、色の薄いおしっこがたくさん出る)症状があったからなんですね。

 

 

これが、国際腎臓病学会(IRIS)が作った慢性腎臓病の犬猫のステージ分けのガイドラインです。

筋肉の老廃物であるクレアチニンでステージ分けを行うのは以前から変わりませんが、SDMAの過去のブログ記事でも何度も書いていますが、クレアチニンはやせている(筋肉の少ない)動物ではあまり上がらないので、病気を過小評価してしまうのです。

上の図のように、SDMAが25μg/dL以上になると、ステージは1個上がってステージ3として評価しましょうとなっています。

ですから今回のワンちゃんの場合、クレアチニンだけ見ると1.5でステージ2となるのですが、SDMA≧25によりステージが1つ上がってステージ3とみなしましょう、となります。

 

  • ステージ2:まだ食欲もある早期腎臓病の状態。食事を腎臓病用療法食に変更しましょう。

  • ステージ3:食欲も低下してくる進行した状態。食欲が落ちるようであれば、点滴治療を考慮しましょう。

このようにステージ2と3では、治療面ではずいぶんと違う結果になってしまうわけです。

今回のワンちゃんは、食欲も元気もありましたので、実質はステージ2の治療として、腎臓病用の療法食へと変更するだけで済みましたが、早めに慢性腎臓病を診断することができ、早めから対処できたのでホッとしています。

 

フィラリア予防のシーズンが始まっています。

新型コロナウイルスの影響で、例年よりフィラリア予防の開始が遅くなっている方も多いと思います。

フィラリア予防の開始前に、心臓にフィラリアの虫がいないかの血液検査を行ってから予防を始めるわけですが、その一緒の採血で内臓の健康診断の血液検査も可能です。

もし腎臓病が心配な方や、「水を飲む量が多い気がするんだよなぁ」という方は、SDMAの測定もお申し付けください。

腎臓病の多いネコちゃんの健康診断としても、心配な方は言ってくださいね!