新しい治療オプションのために

2018年08月02日 (木)

オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。

7月はシフト変更が多くてご迷惑をお掛けしました。。。

 

そんな7月半ば、シフトを代わってもらいピューッと行って来ました。

 

新しい治療オプションのための知識を取り入れるため、勉強会に参加してきましたよ。

なんの勉強をしてきたかと言うと、「レーザー治療」についての研究会に参加させていただきました。

 

レーザー治療が役に立ちそうなこんな時

1.レーザー治療器として

・椎間板ヘルニアで腰が痛いので、レーザー治療で痛みを和らげる(お薬に加えて治療のオプションに)

・猫ちゃんの口内炎の痛みを和らげるためにレーザー照射

・術後の傷の治りを促進するためにレーザー照射

・皮膚炎がひどいのでレーザー照射 etc..

 

2.腫瘍の治療のオプションとして

・体のあちこちにイボができたので、レーザーで蒸散(イボを一瞬で焼くので多くは無麻酔or局所麻酔で可能)

・心臓が悪いなど、全身麻酔に耐えられない犬の体表や口の中の腫瘍を、局所麻酔下でレーザーで切除する

・通常な治療が難しい悪性腫瘍に対してのオプションとして

→レーザーをあてて温熱療法(温めることで腫瘍細胞を不活化)やレーザー照射により腫瘍周辺に作られる熱ショックプロテインや過酸化水素などによる細胞傷害性物質の力で、腫瘍をそれ以上大きくさせない、あるいは少しずつ小さくする

 

3.手術室でのレーザーメスとして

・レーザーメスとして、手術の際に出血がほとんどない切開が可能に

・血管シーリング(血管をはさんで熱で血管をシールして出血なく切断する方法)→縫合糸を使わず素早く安全な手術が可能になります

 

4.歯周病治療として

・歯石をきれいにしたあとの、歯周ポケット内の細菌や不良組織をきれいにすることで、歯周ポケットが治ってピタッと密着する

 

 

 

思いつくところをざっと書いてみましたが、まだまだ細かいところを含めるとたくさんありますので、実にたくさんの使いみちがあるわけですね。

 

以前より、ヘルニアで腰を痛がるダックスちゃんや、乳がんが大きくなって血がポタポタ出るけど、高齢で大きな手術はできないおばあちゃんワンちゃんなどをみるたびに、もう少し何かできることがないものか・・・と日々葛藤しておりました。

 

レーザー治療は、決してメインの治療にはなり得ませんが、プラスαのオプションとして、あるいは通常の治療が難しいような患者さんの生活の質を保つために、使い方次第ではとても有益なオプションになると考えています。

 

だいぶ持ち上げましたが、導入は未定です。。。

まだまだ勉強不足ですので、色々と情報入手してもっと勉強して、近い将来こういった治療をやって行けたらなぁと思っています。

 

 

セミナー終了後、終電の新幹線で福岡に帰ります・・・

 

 

これでもか!というTHE・名古屋な駅弁を食べながら名古屋を後にします

 

3時間半の新幹線は長いですね~。でもビール飲んでグータラしてませんよ

THE・名古屋弁当食べた後は、セミナーの復習しながら帰りましたとさ。。。

 

新しい検査が院内測定できるようになりました~CRP(C反応性タンパク)

2018年06月15日 (金)

オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。

先日、新しい検査機器『カタリスト One』導入のお話をさせていただきましたね。

 

今後測れるようになるだろう検査ということで簡単に触れておりましたが、ついに6月頭より『CRP(C反応性タンパク)』という検査項目が測定できるようになりました!

 

 

どんな検査なの?

CRP(C反応性タンパク)とは、体の中に炎症反応が起こった場合に急速に体の中で作られるタンパク質です。

CRPが上がる原因としては、大きく分けて以下の3つの病態が考えられます。

 

1.炎症反応:肺炎や子宮蓄膿症などの感染症や急性膵炎や腸炎などの炎症性疾患、歯周病でも上がることがあります。

2.腫瘍:リンパ腫や悪性ガンなどの腫瘍でも上がります。

3.疫介在性疾患:多発性関節炎などの自己免疫が原因の炎症でも上がります。

 

具合いが悪いワンちゃんで発熱がありCRPが高い場合、上記3つの可能性を考えて次のステップの検査へと進みます。

 

どんな時に役に立つの?

CRPが最も役に立つのは、病気の鑑別(かんべつ)といって、「どういった病気が考えられるか?」を絞っていくときの参考になることです。

 

例えば、中年齢のミニチュア・ダックスの子が来院したとします。

どこかを痛がったり少しびっこを引いている様子です。

 

まずは、ダックスで有名な「椎間板ヘルニア」を考えます。

少し微熱があるようです・・・となると、まれな病気ですが、「免疫介在性多発性関節炎」という、あちこちの関節で炎症が起きて、足のびっこだけではなく、発熱や食欲低下などの全身症状を起こす難病の可能性も出てきます。

どちらもダックスには非常に多い病気です。

 

痛みがある時は、犬の性格によっては痛い場所を教えてくれません。。。

痛いところを触ってもひたすらガマンする子もいますし、関係ない場所でもどこでも触るとキャンキャン鳴いてしまう子もいるわけですね。

 

そこで役に立つのがCRPです。

多発性関節炎では、ほとんどの犬がCRPが顕著に上がります。

一方で、椎間板ヘルニアの犬は、CRPが上がることは少ないので、おおまかにそのどちらの可能性が高いかを推測することができます。

 

それはほんの一例で、他にも様々な病気を疑うヒントになりますし、何となく病気自体の重症度を知ることもできるのですね。

 

治療経過のモニターにも

 

CRPが大いに役立つもう一つの場面は、治療経過がうまく行っているかどうかの判定にも使えるということです。

例えば、炎症反応を引き起こす病気になって治療をしているとします。

1週間治療をして途中でCRPを測ってみます。治療前より下がっていれば今後の見通しは明るくなります。

一方で、治療をしても数値が下がらなかったり、むしろ上がっていく場合は、その治療を今一度見直すきっかけとなります。

 

 

 

とても専門的なお話になってしまいました(反省)

要は、病気の診断や治療判定に使えるすごく良い検査が、院内で迅速に測定できるようになりましたので、診断レベルアップにつながります。

よく外注検査に出していたので、院内ですぐにその結果が分かるようになったことが本当に喜ばしいです。

 

 

※注意!この検査はワンちゃんだけの検査になります!

猫ちゃんでは、炎症反応が起こった際にもCRPが上がらないことから、ヒトや犬と同じようにCRPを利用することができません。

同じ生き物なのに不思議ですね。。。

糖尿病と血糖値マーカー「フルクトサミン」

2018年05月04日 (金)

オークどうぶつ病院けやきの副院長の前谷です。

先日、新しい機器IDEXX カタリストOneのお話をしました。

それにより新しく測定できるようになった糖尿病のマーカーのお話です。

 

犬猫の糖尿病とは

 

犬や猫も糖尿病になります。

糖尿病というのは、膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンが分泌されない、あるいはなんらかの影響でうまく体の中で働いてくれないことで起こります。

 

糖尿病の詳しいお話は省略しますが、糖尿病になった患者さんの治療は、ほとんどの場合

「ご家庭でインスリンの注射を打っていただくこと」

が必要となります。

 

インスリンの注射を行う 猫

 

インスリンを飼い犬や猫に注射をすることには皆さん抵抗がありますよね。

皆さん最初は尻込みしながら恐る恐るやるのですが、少しすると慣れてきて、とても上手に注射をするようになるんですよね。そのうち、僕らもかなわないくらいに上手になります。

わが子のために、まさに母(父)は強し!・・・ですね。

 

糖尿病の治療の経過観察

 

糖尿病の犬猫は、「朝ごはん食べてインスリン打つ→晩御飯食べてインスリン打つ」という毎日になります。

投与するインスリン量が少なければ糖尿病が管理できませんし、多すぎれば怖い『低血糖』症状が起きる危険性がありますから、投与量が適切かどうか定期的に調べる必要性があります。

 

血糖値の測定は、採血した瞬間の値しか見れません。

一日を通してどのくらいの血糖値になっているかを推測するためには、例えば朝から夕方までお預かりして、3時間おきに採血して血糖値を追っていく方法をとることもありますが、病院にずっといないといけないのはストレスですよね。

また、ネコちゃんは採血時に「ギャーっ」と興奮してしまうと血糖値が上がってしまいますから、必ずしも正確な血糖値が測れるわけでもないんですよね。

 

そこで登場したのが、血糖値マーカーです。

血糖値マーカーというのは、体の中のたんぱく質などの物質に糖が結合したものを測定することで、採血時からさかのぼって2~3週間の間で、血糖値がどう推移していたかの平均値を取る検査です。

 

ヒトでは、血液中のヘモグロビンに結合したHbA1C(ヘモグロビンエーワンシー)という項目を測定しますが、動物では血液中のたんぱく質に糖が結合した「糖化アルブミン」や「フルクトサミン」という物質を測定します。

それにより、一回の採血で、平均的な血糖値の動きが予想できますので、今のインスリン量で適切な治療が行えているかどうかを評価できるのです。

 

院内検査できるようになった血糖値マーカー『フルクトサミン』

 

この3月より、先日導入したばかりのIDEXX カタリストOneという機器で、血糖値マーカーの『フルクトサミン』という検査が行えるようになりました。

フルクトサミンは、血液中のたんぱく質に糖が結合した物質で、2~3週間の血糖値の平均的な動きを見ることができる血糖値マーカーです。その歴史は長く、ずいぶん前から犬猫の糖尿病治療に使われてきた、とても信頼性の高い検査です。

 

これまでは、糖化アルブミンという検査を外注で送っていましたので、後日お電話で結果を報告してからインスリン量の変更を指示したりというタイムラグが何とも歯がゆかったのですが、このたびのフルクトサミンの採用で、通常の血液検査の待ち時間(約15分)でインスリン治療が適切かを即座に判断できるようになりました。

 

IDEXX フルクトサミンの測定 カタリストOne

糖尿病コントロールを行っている猫ちゃんの結果です。フルクトサミンが300~400(μmol/L)の範囲に入っていますので、とても良好に糖尿病がコントロールできているということが分かりますね。

 

フルクトサミン カタリストOne

一方でこのワンちゃんの場合は、フルクトサミンが450(μmol/L)を超えていますので、血糖値の平均的な動きが高めを推移しているということです。血糖値の平均を下げるためにはインスリンを増やす必要があります。

 

今後、どんどん院内検査で測れる項目が増えると思いますので、IDEXX カタリストOneには大いに期待しております。

 

新しい血液検査の機械が入りました!

2018年04月13日 (金)

オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。

フィラリア検査が始まりましたので、同時に健康診断の血液検査を希望される方が増えています。

 

オークどうぶつ病院では、西区・中央区の2病院ともに、血液検査の機械を2台体制でフル稼働しておりましたが、このたび3月末より1台をリニューアルしました!

 

 

IDEXX カタリストOne フルクトサミンやCRP、将来的にはSDMAも測定可能に!?

リニューアルしたIDEXX カタリストOne

 

これが新しい機械『IDEXX カタリストOne』です。

これは良いですね~

旧機種も隣に置いて新・2台体制で行っているのですが、専用のパソコン(IDEXXベットラボステーション)とつながっているので、2台の結果を一元管理できます。

腎臓病などで定期的に検査を行っている患者さんは、前回の結果を呼び出して横に印刷したり、それをグラフ化して載せることも可能です。

 

何よりも嬉しいのは、これまで外注検査で結果が出るまでに数日かかっていた特殊検査項目が、院内ですぐに結果が出せるように今後も進化していく見通しだということですね。

 

◎具体的には以下の検査が可能です。(あるいは可能となる見込みです。。。)

T4 甲状腺ホルモンの検査です。犬の甲状腺機能低下症猫の甲状腺機能亢進症の診断や、治療が適切かの判断を行うことができます。

これまでも院内検査は可能でしたが、より詳細な範囲で測定することができるようになりました。

コルチゾール 犬に多いクッシング症候群の診断や、治療の経過(薬の量が適切かどうか)などを院内で調べることができます。

これまで通り、旧機種のVET TESTで測定可能です。今のところ旧機種でしか測れませんので、新旧2台体制の良いとこ取りですね。

フルクトサミン 糖尿病の犬猫のインスリン量が適切かどうか、定期的に見ていく数値です。

これまで外注検査のみでしたが、院内検査ですぐに結果が出るようになりましたので、その場でインスリンの量が適切か判断できるようになりました。

尿タンパク・クレアチニン比(UPC) 腎臓から漏れ出すタンパクを数値で測定できます。詳しくはこちらをご覧ください。

タンパク尿は、腎臓病の犬猫の予後を悪化させると考えられていますので、尿タンパクが出ている子には尿タンパク漏出を抑制するお薬を処方します。

これまでも院内機器で測定しておりましたが、細かな数値が測定できるようになり、測れる範囲が広がりましたので、さらに便利になりました。

CRP 炎症反応がどのくらいあるか調べる数値です。

病気の重症度や、どういった病気が推測されるか、あるいは治療によって良くなっているかどうかのモニターなど・・・あらゆることに応用できます。

今年の中頃にはカタリストOneで測定可能になると言われていますので、早い登場が待たれます!

SDMA これはあくまでもウワサですが・・・

他の記事で紹介しました、犬猫の腎臓病の早期発見マーカーであるIDEXX SDMAが将来的に院内で測定できるようになるという話も出ていますので、なんとかIDEXXさんに実現してもらいたいものです。

 

またまた難しいお話をしてしまいましたね。。。

個々の詳しいお話は追ってさせていただくとして、一言で申しますと、

 

「どんどんより良い診断・治療が迅速にできるようになっていく!」

 

ということですね。

導入直後ですので、みんな慣れるのに必死です。。。

ちょっとだけお待たせすることがあるかもしれませんが、どうかよろしくお願いいたします。

 

 

猫の心臓病の検査~『スナップproBNP』新発売!

2018年03月19日 (月)

オークどうぶつ病院けやきの副院長の前谷です。

暖かくなるにつれ、フィラリア予防の時期が近づいてきましたね。

病院が混み合う前に、この時期にフィラリアの検査を行っておくことも可能です。

犬はもちろんですが、猫もフィラリアに感染することが分かっていますので、予防をオススメします。

その際、各種健康診断の検査も同時に行うことができますので、ご希望の方は担当獣医師にお申し付けください。

 

 

犬と猫の心臓病の違い

 

血液検査で異常を見つけにくい臓器の1つとして、心臓の病気があります。

 

犬に多い弁膜症(心臓の中の弁が閉じなくなる病気)は、聴診器で心雑音を聞くことで早期に診断することが可能です。

それに対して、猫の心臓病は聴診で診断できることは少なく、水面下で無症状のまま進行します。

運が悪く血栓ができて動脈に詰まった場合は、昨日まで元気にしていた猫の命をあっという間に奪ってしまうこともある、とても恐ろしい病気なのです。

 

 

猫に多い『心筋症』を正確に診断するには、心エコー検査(心臓超音波検査)が必要となりますが、暴れてじっとしてくれなかったり、ドキドキして心拍数が上がると心臓内をじっくりと見ることが難しくなります。

もっと手軽に心臓の病気を疑うことができる検査があれば、猫ちゃんたちにかかる負担も少なくなります

 

 

心臓病の可能性を疑うことができる新しい検査の登場

 

そこで登場したのが、新発売の『スナップproBNP』という検査キットです。

 

猫用スナップproBNP(心臓バイオマーカー)

 

 

心筋に負担がかかった時に血液中に放出される物質である、NT-proBNP(N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチドという長たらしい名前があります・・・)を検出することで、無症状でも気づかないうちに心筋に負担がかかっていないかどうかを、血液を抜くだけで知ることができます。

 

この検査キットを使うことで、無症状の中等度以上の心筋症の猫の85%を検出できると言われています。

NT-proBNPという検査は、これまでも血液を検査センターに送付することで測定できた検査なのですが、検査結果の報告には数日かかりました。

 

この検査キットは院内で10分あれば判定できますので、健康診断の一環として心筋症のリスクを知ることができると考えています。

 

 

 

こんな時にご提案するかもしれません・・・

 

・心筋症になりやすい品種の場合: メインクーンソマリアメリカン・ショートヘアなどの猫ちゃんは、若くても要注意です。

・聴診して心雑音やギャロップ(馬が走るような心調律)などの異常があったとき

健康診断の一環として、心臓病の可能性を否定したいとき

・呼吸が苦しい、咳をするなどの症状があって、心臓病からの可能性を否定したいとき

・心臓病が疑われるが、猫が大暴れして超音波検査が難しい場合

 

 

検査費用は、¥4,500(税抜き)となっております。

 

純血種の洋ネコちゃんを飼っていて心配な方や、健康診断の一環としてご興味があれば、お気軽にお問い合わせください。

内視鏡検査~検査機器の紹介から実際の動画まで

2016年10月02日 (日)

オークどうぶつ病院けやきの副院長の前谷です。

内視鏡の機械は、昔からありますが、2年前くらいに新しい内視鏡に変わりました。

オークどうぶつ病院としては、3代目の内視鏡です。

新しくなる度に画質がきれいになり、技術の進歩を感じます。

内視鏡中

 

内視鏡検査の適応とは

内視鏡検査は、なかなか治療をしても治らない「下痢」や「嘔吐」の原因診断として用います。

症例画像

そこに慢性炎症があるのか、はたまた腫瘍ができているのか・・・。

肉眼的に異常がないように見えても、必ず組織は取って病理検査に提出するようにしています。

犬猫では、肉眼所見のみでの診断は不可能と言われています。

 

もう一つの適応としては、何かを飲み込んでしまった場合の異物を取るために用います。

異物症例画像

実際のところ、こちらのケースの方が使用頻度が高いわけですが、内視鏡では取り出せない異物もあります。

大きくて胃から引っ張り出せないものもあれば、胃から流れたヒモなども無理に引っ張ってはいけません。

 

内視鏡の機械ってどんなの?

ちょっとマニアックなお話になります。

ここを頑張って読んだら、最後に内視鏡を実際に使ってる動画がありますので、ぜひ見てみてください。

 

内視鏡は、長さが1メートル40センチのしなやかなチューブを口から入れていきます。

手元のレバーで上下右左に操作しながら、曲がりくねった腸内を進んで行きます。

 

先端の構造はこうです。

内視鏡先端詳細

写真のように、腸内を照らす光源と、カメラのレンズ、そして水を出したり吸ったりするノズルもあります。

大きな穴は、そこから内視鏡用の鉗子を出して、異物をつかんだり、組織を生検したりするための穴です。

 

生検鉗子シリーズ’

異物をつかむ鉗子です。大きいものから小さいもの。ワイヤーで挟み込むバスケット鉗子などがあります。

 

組織生検シリーズ’

生検に使う生検鉗子です。

アイスクリームのカップのような先端で、胃や腸の粘膜を挟んでつかみ取ります。

取った組織は、ろ紙に載せてホルマリンで固定して病理検査に提出します。

 

 実際に使用した症例の動画

 

実際に内視鏡を使用した症例の動画を集めました。

今回用いたのは異物を摘出したケースばかりですが、慢性の下痢や嘔吐の診断においても大活躍しております。

 

※内視鏡には適応症例があります。基本的には、手術時間に予約制で行っておりますので、急に内視鏡をご希望されて来院されても難しい場合があります。ご了承ください。

新しい腎臓検査 『IDEXX SDMA』②~役に立った症例編

2016年09月28日 (水)

オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。

先日、慢性腎疾患の新しい検査 『IDEXX SDMA』 についてのお話をしましたが、今回は、その検査のお陰で慢性腎疾患と診断可能であったワンちゃんのお話です。

 

IDEXX_SDMA

 

 

今回のワンちゃんは、高齢のやせ型の犬であり、先日に血液検査を行った段階では、腎臓の数値はいずれも正常でした。

 

  • BUN(尿素窒素): 18 mg/dl (基準値;7-27 mg/dl)
  • Cre(クレアチニン): 0.9 mg/dl (基準値; 0.5-1.8 mg/dl)
  • PHOS(血中リン): 3.6 mg/dl (基準値; 2.5-6.8 mg/dl)

 

しかし、同時に行った腹部超音波検査では、左の腎臓に2つののう胞(水ぶくれ)が見つかりました。

 

 

そのため、腎機能の40%以上に障害が起きて上昇する、新しい腎臓の検査である『IDEXX SDMA』を測定したところ・・・

高齢犬SDMA結果 犬CKDステージング

また、尿比重が1.010と薄く、以前お話しした尿タンパククレアチニン比(UPC)が、0.2とグレーゾーンでした。

 

クレアチニンやその他の血液検査では異常を認めませんでしたが、SDMAを測定することで、慢性腎疾患と早期に診断し、食事療法を早めに取り組めたケースでした。

 

今回は、先に腎のう胞という画像的な異常が見つかりましたが、腎臓は片方だけが機能している状態でも、血液検査の数値は正常であることが多いですので、シニア犬猫の健康診断の一環として、新しいSDMA検査を加えていくのも、腎疾患の早期発見のためにオススメです。

 

検査料金は、¥2,592 で、2~3日後の結果報告となります。


腎疾患の新しい血液検査~『IDEXX SDMA』

2016年09月10日 (土)

オークどうぶつ病院けやきの副院長の前谷です。

今回は、犬猫の慢性腎臓病の新しい診断検査として登場した新しい外注検査をご紹介します。

IDEXX_SDMA

ヒトでは、慢性腎臓病のステージ(病期)の判定は、GFR(糸球体ろ過量)という腎臓の仕事量をもとに判定されています。

本来は、犬や猫もこの指標を用いたいところですが、犬・猫でGFRを測ることはなかなか難しいのが現状で、代わりにクレアチニンという検査項目が指標として用いられています。

 

クレアチニンは筋肉の代謝老廃物であり、筋肉の少ないやせた動物では数値が上がりにくいので病気を過小評価してしまったり、腎機能が75%以上失われた段階まで上がらず、発見が遅れてしまう・・・などの問題点がありました。

 

この新しい腎臓のバイオマーカー「SDMA」は、対称性ジメチルアルギニンという物質で、筋肉量により影響を受けず、腎臓以外の要因の影響も受けないことから、犬猫では検査が難しい糸球体ろ過量GFRを反映する優れた検査項目となります。

 

SDMAは、腎機能が40%失われた段階で上昇するので(従来のクレアチニンは腎機能が75%失われてからようやく上昇)、これまでより早期に慢性腎臓病を検出可能と言われています。

 

報告では、従来のクレアチニンによる判定に比べて、猫では平均で 17ヶ月、犬では 9.5ヶ月早く慢性腎臓病を検出できた とされています。

 

症状が出る前に、健康診断において慢性腎臓病を検出できる可能性に僕としても大いに期待しています。

猫CKDステージング

世界各国の15名の獣医腎臓病学専門家から構成されるIRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)における最新の慢性腎臓病の治療ガイドラインにも追加された期待の腎臓バイオマーカーです。

 

上の図は、猫の慢性腎臓病のステージ判定に使われる指標ですが、従来のクレアチニンに加えて、SDMAがステージ判定において使用される項目として加えられました。

 

補助検査としては、以前にこのブログでお伝えしたことのある尿タンパククレアチニン比(UPC)も記載されています。

 

当院でも、慢性腎臓病の治療中の子や、腎臓病を心配してらっしゃる動物の飼い主さんに検査を行っています。

idexx sdma

検査料金は、¥2,592 で、外注検査ですので、後日2~3日で報告となります。

腎臓病を心配されているワンちゃん猫ちゃんや、あるいは健康診断の一環として、ぜひ一度ご検討ください。

 

続きまして、SDMAの検査が役に立った症例についてはこちらをご覧ください。

尿検査(尿タンパククレアチニン比:UPCの測定)

2016年05月10日 (火)

オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。

今日は新しい尿検査機器 『ポケットケム(アークレイ社製)』 のご紹介をします。

 

慢性腎臓病(CKD; Chronic Kidney Disease)とは

犬猫も高齢化に伴い、慢性腎臓病(CKD、以前は慢性腎不全と呼んでいた)が増加傾向です。

慢性腎臓病CKDは、様々な腎疾患により、腎臓の障害が慢性的に進行していく病態です。

一度進行した腎臓の障害は元に戻すことはできず、残った腎臓の機能をいかに温存するかが治療のカギとなります。

そのため、早期に発見し、治療を開始することが肝心となります。

 

最近の新しい知見:「タンパク尿が腎臓病の予後を悪化させる!」

慢性腎臓病CKDの治療には、食事中のリンやナトリウム、タンパクを制限する食事療法や、脱水を改善する点滴療法などがあります。

最近では、尿中のタンパク漏出により、腎臓病の動物の予後が悪化することが示されています

そのため、慢性腎臓病CKDと診断された犬猫において、腎臓の糸球体という部位からのタンパク漏出を防ぐ新しい薬も登場してきました。

そのため、検査によりタンパク尿を認めた動物に対しては、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)や、アンギオテンシン受容体阻害薬(ARB)という種類の薬を投与することをお勧めしています。

 

院内で迅速にタンパク尿の数値を計測可能に!

当院では、これまで外注検査で尿タンパク漏出を検査しておりましたが、院内で尿タンパククレアチニン比(UPC)を検査可能な機器を導入いたしました。

IMG_20160305_150444

採尿をしてから約1分間で尿タンパクの数値が計測できるようになりましたので、慢性腎臓病CKDの犬猫において、上記のお薬を投薬すべきかの判断が迅速に可能になります。

尿検査正常’UPC高値症例’

 

左は正常な猫ちゃんの検査結果です。右は尿タンパ漏出を認めた猫ちゃんの検査結果です。

 

ちなみに・・・

の正常値は、0.5 未満

猫の正常値は、0.4 未満

と言われています。

 

しかし、猫の慢性腎臓病CKDでは、タンパク漏出は起こりくいと考えられるため、尿タンパク/クレアチニン比(UPC)が0.2以上の症例では上記の投薬を行うことが推奨されています

 

早期にタンパク尿を診断し、治療を開始することで腎臓病の悪化を防ぐことが可能となりますので、腎臓病CKDと診断された犬猫ちゃんは、尿検査(尿タンパクの検査)もご検討ください。

 

↓慢性腎疾患(CKD)の診断に役立つ新しい検査についても併せてお読みください。

酸素ハウス

2016年04月12日 (火)

オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。

今日は当院の新しい治療機器、酸素室(酸素ハウス)のお話です。

 

呼吸が荒い、息苦しい動物の緊急治療に!

正式には、動物用ICUと呼びますが、酸素濃度や温度、湿度を自動的に

調節してくれる優れものです。

ICU

 

大気中の酸素の濃度は約21%ですが、この装置を使えば入院室の酸素濃度を40%まで

高めることが可能となります。同時に、温度・湿度管理も可能になりましたので、呼吸が

苦しい動物にとっては快適な休息の場となります。

 

心臓が悪く呼吸が荒い、肺機能が落ちて苦しいなどのワンちゃん、猫ちゃんに、まず

高濃度の酸素を吸ってもらうことで、呼吸困難の動物の救命率向上が期待できます。

 

人間用にもう1台あれば、業務終了後に僕が入りたいくらいです。。。

 

在宅での酸素吸入も可能に!

肺疾患や慢性心不全の患者さんにとっては、しっかり治療をしていても常に呼吸が

荒かったり、調子に波があって不安な日々を過ごすことも多いのが現状です。

 

そんな時に、在宅で酸素濃度を管理する酸素ハウスがあります。

 

テルコム酸素ハウス

 

アクリルのケージと酸素発生装置(室内の空気中の酸素を濃縮して高濃度酸素を

発生する仕組み)を自宅にレンタルして、必要な日数のみの日割り料金も可能です。

 

詳しくは、スタッフまでお気軽にお問合わせください。