オークどうぶつ病院けやきの副院長の前谷です。
内視鏡の機械は、昔からありますが、2年前くらいに新しい内視鏡に変わりました。
オークどうぶつ病院としては、3代目の内視鏡です。
新しくなる度に画質がきれいになり、技術の進歩を感じます。
内視鏡検査の適応とは
内視鏡検査は、なかなか治療をしても治らない「下痢」や「嘔吐」の原因診断として用います。
そこに慢性炎症があるのか、はたまた腫瘍ができているのか・・・。
肉眼的に異常がないように見えても、必ず組織は取って病理検査に提出するようにしています。
犬猫では、肉眼所見のみでの診断は不可能と言われています。
もう一つの適応としては、何かを飲み込んでしまった場合の異物を取るために用います。
実際のところ、こちらのケースの方が使用頻度が高いわけですが、内視鏡では取り出せない異物もあります。
大きくて胃から引っ張り出せないものもあれば、胃から流れたヒモなども無理に引っ張ってはいけません。
内視鏡の機械ってどんなの?
ちょっとマニアックなお話になります。
ここを頑張って読んだら、最後に内視鏡を実際に使ってる動画がありますので、ぜひ見てみてください。
内視鏡は、長さが1メートル40センチのしなやかなチューブを口から入れていきます。
手元のレバーで上下右左に操作しながら、曲がりくねった腸内を進んで行きます。
先端の構造はこうです。
写真のように、腸内を照らす光源と、カメラのレンズ、そして水を出したり吸ったりするノズルもあります。
大きな穴は、そこから内視鏡用の鉗子を出して、異物をつかんだり、組織を生検したりするための穴です。
異物をつかむ鉗子です。大きいものから小さいもの。ワイヤーで挟み込むバスケット鉗子などがあります。
生検に使う生検鉗子です。
アイスクリームのカップのような先端で、胃や腸の粘膜を挟んでつかみ取ります。
取った組織は、ろ紙に載せてホルマリンで固定して病理検査に提出します。
実際に使用した症例の動画
実際に内視鏡を使用した症例の動画を集めました。
今回用いたのは異物を摘出したケースばかりですが、慢性の下痢や嘔吐の診断においても大活躍しております。
※内視鏡には適応症例があります。基本的には、手術時間に予約制で行っておりますので、急に内視鏡をご希望されて来院されても難しい場合があります。ご了承ください。
オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。
先日、慢性腎疾患の新しい検査 『IDEXX SDMA』 についてのお話をしましたが、今回は、その検査のお陰で慢性腎疾患と診断可能であったワンちゃんのお話です。
今回のワンちゃんは、高齢のやせ型の犬であり、先日に血液検査を行った段階では、腎臓の数値はいずれも正常でした。
- BUN(尿素窒素): 18 mg/dl (基準値;7-27 mg/dl)
- Cre(クレアチニン): 0.9 mg/dl (基準値; 0.5-1.8 mg/dl)
- PHOS(血中リン): 3.6 mg/dl (基準値; 2.5-6.8 mg/dl)
しかし、同時に行った腹部超音波検査では、左の腎臓に2つののう胞(水ぶくれ)が見つかりました。
そのため、腎機能の40%以上に障害が起きて上昇する、新しい腎臓の検査である『IDEXX SDMA』を測定したところ・・・
また、尿比重が1.010と薄く、以前お話しした尿タンパククレアチニン比(UPC)が、0.2とグレーゾーンでした。
クレアチニンやその他の血液検査では異常を認めませんでしたが、SDMAを測定することで、慢性腎疾患と早期に診断し、食事療法を早めに取り組めたケースでした。
今回は、先に腎のう胞という画像的な異常が見つかりましたが、腎臓は片方だけが機能している状態でも、血液検査の数値は正常であることが多いですので、シニア犬猫の健康診断の一環として、新しいSDMA検査を加えていくのも、腎疾患の早期発見のためにオススメです。
検査料金は、¥2,592 で、2~3日後の結果報告となります。
オークどうぶつ病院けやきの副院長の前谷です。
今回は、犬猫の慢性腎臓病の新しい診断検査として登場した新しい外注検査をご紹介します。
ヒトでは、慢性腎臓病のステージ(病期)の判定は、GFR(糸球体ろ過量)という腎臓の仕事量をもとに判定されています。
本来は、犬や猫もこの指標を用いたいところですが、犬・猫でGFRを測ることはなかなか難しいのが現状で、代わりにクレアチニンという検査項目が指標として用いられています。
クレアチニンは筋肉の代謝老廃物であり、筋肉の少ないやせた動物では数値が上がりにくいので病気を過小評価してしまったり、腎機能が75%以上失われた段階まで上がらず、発見が遅れてしまう・・・などの問題点がありました。
この新しい腎臓のバイオマーカー「SDMA」は、対称性ジメチルアルギニンという物質で、筋肉量により影響を受けず、腎臓以外の要因の影響も受けないことから、犬猫では検査が難しい糸球体ろ過量GFRを反映する優れた検査項目となります。
SDMAは、腎機能が40%失われた段階で上昇するので(従来のクレアチニンは腎機能が75%失われてからようやく上昇)、これまでより早期に慢性腎臓病を検出可能と言われています。
報告では、従来のクレアチニンによる判定に比べて、猫では平均で 17ヶ月、犬では 9.5ヶ月早く慢性腎臓病を検出できた とされています。
症状が出る前に、健康診断において慢性腎臓病を検出できる可能性に僕としても大いに期待しています。
世界各国の15名の獣医腎臓病学専門家から構成されるIRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)における最新の慢性腎臓病の治療ガイドラインにも追加された期待の腎臓バイオマーカーです。
上の図は、猫の慢性腎臓病のステージ判定に使われる指標ですが、従来のクレアチニンに加えて、SDMAがステージ判定において使用される項目として加えられました。
補助検査としては、以前にこのブログでお伝えしたことのある尿タンパククレアチニン比(UPC)も記載されています。
当院でも、慢性腎臓病の治療中の子や、腎臓病を心配してらっしゃる動物の飼い主さんに検査を行っています。
検査料金は、¥2,592 で、外注検査ですので、後日2~3日で報告となります。
腎臓病を心配されているワンちゃん猫ちゃんや、あるいは健康診断の一環として、ぜひ一度ご検討ください。
続きまして、SDMAの検査が役に立った症例についてはこちらをご覧ください。
オークどうぶつ病院けやきの副院長の前谷です。
今回は、新しく登場したアトピー性皮膚炎の治療薬についてです。
これまで、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患による醜いかゆみに対しては、ステロイド剤が治療の中心となっていました。
しかし、短期間で使用する分はほとんど副作用の心配はありませんが、長期投与の場合は、全身的に様々な副作用が生じることが問題とされていました。
今回登場する新薬「アポキル錠」は、かゆみを脳に伝達する信号をピンポイントでブロックする新しいタイプの薬であり、ステロイドとの比較において、副作用がとても少ないことがメリットです。
効果としては、臨床試験において、ステロイド(プレドニゾロン)と同等の効果が証明されています。
投与後4時間で急速にかゆみが減少するという結果も出ていますので、「かゆいことで皮膚を引っかく→引っかいた皮膚に炎症が生じる→さらなるかゆみや皮膚バリア機能低下で新たな感染症が生じる・・・」
といった『かゆみの悪循環』を断つことを目的に開発されています。
発売を心待ちにしておりましたので、7月中旬の発売以来、これまでステロイドを常備薬として飲み続けてきた方や、ひどいかゆみでお悩みのワンちゃんに処方をして来ました。
ステロイドを常備薬として使ってらっしゃった飼い主さんからは、ステロイド程ではないがかゆみは減ってる・・・という声もあり、ステロイドの効果を10とすると、アポキルの効果は6~8くらいかなという印象をもっています。
ステロイドは炎症も和らげるのに対し、アポキルはかゆみの信号をブロックし、脳への伝達を抑える薬剤なので、その辺りの効果としては仕方ない範囲内かなと。
しかし、副作用がほぼ心配いらないので、安心して継続できることが何よりのメリットだと思います。
一部のワンちゃんには、「すごくいい!」という声も頂戴しておりますし、投与後1週間以内で、皮膚の赤みが改善されていたりといった効果を実感できる症例も増えてきています。
副作用としては、嘔吐や下痢といった消化器症状が少数報告されています。
海外では長期投与(最長600日以上)の使用報告や、副作用を調査した米国での臨床試験結果もありますが、適正な使用を守っていれば、重大な副作用はほぼ心配がなさそうです。
当院でも、醜いかゆみを訴えるワンちゃんの治療薬の新たな選択肢としてご提案させていただいておりますので、お気軽にお問合せ下さい。
※ 皮膚や全身状態によっては、アポキル錠を勧めないケースもあります。
発売元のゾエティス・ジャパンさんの特設サイト「犬のかゆみ.com」には詳しい皮膚病の病気や治療の説明が載っていますので、皮膚のかゆみでお悩みのワンちゃんの飼い主さんは、ぜひ一度ご覧ください。
オークどうぶつ病院けやきの副院長の前谷です。
表題にあるように、『病気で療法食を食べているんですが、何か与えていいおやつはありませんか?』という質問。。。
非常に多いんです!!
これまでそのご要望にお応えできるいい商品がなかったと思います。しかしこのたび、『PEペティッツソフトトリーツ』というおやつが2種類、新発売しました!
①左は食物アレルギーで皮膚をかゆがるので、特別療養食しか与えられなかったワンちゃん用に、「アレルゲン除去」シリーズ。
犬の主要アレルゲン34品目を含む動物性たんぱく質、じゃがいも、さつまいもを完全排除したアレルゲンフリーのおやつです。
②右は、尿路結石で石ができてしまう、心臓が悪い、腎臓が悪くて専用フードしか食べられなかったワンちゃん用の、「ミネラルコントロール」シリーズです。
塩分やマグネシウム、リンなどのミネラル成分を調整し、これまで食事内容には細心の注意を払ってもらっていた尿路結石や心・腎疾患の患者さんにも安心して与えることができます。
ちぎって与えられるソフトタイプのおやつで、1粒あたり 7.8kcalと、肥満予防にも配慮した低カロリーのおやつとなっております。
原材料としては、「第4の穀物」として近年注目を浴びているホワイトソルガムを使用し、グルテンフリーも実現してます。
うちの看板犬の『ぐり&ぐら』も競い合って食べてましたよ。
私も食べてみましたが・・・決して美味しいものでは・・・
他のワンちゃんにもあげてみましたが、犬はよく食べますよ!
お値段はいずれも、85g(約35粒入り)で、¥1,026 となっております。
詳細はスタッフまでお気軽にお問合せ下さい。
グリニーズ・ピルポケットのご紹介
2016年08月14日 (日)
オークどうぶつ病院けやきの副院長の前谷です。
実はこれ、以前販売してとても評判が良かったんですよね。
しかし、米国での鳥インフルエンザ発生により販売中止となり、ご迷惑をおかけしましたが、このたび再販が決定いたしました!
愛犬・愛猫が病気になり、薬を飲ませるのって大変だと思います。
何か簡単に、動物にもストレスなく薬をあげられないものか!?
そんな思いに応える商品だと思います。
以前使っていた印象としては、ワンちゃんは、かなりの子が食べてくれます!
猫ちゃんはかなりグルメな子が多いせいか、あまり・・・。
- 犬用: 90g(約30個入り)→ ¥1,210
- 猫用:45g(約45個入り)→ ¥1,620
※ 猫用は、9月上旬の発売予定です! →犬猫ともに受付で販売中です!
※ 原材料として、チキンや小麦、小麦グルテンを含みますので、食物アレルギーの子には推奨されません。
※ 何か疾患をお持ちの子に与えてよいかは、お気軽にお問合せ下さい。
オークどうぶつ病院けやきの副院長の前谷です。
今回は、自宅で耳そうじや点耳薬が難しいワンちゃんに、効果が1週間持続する新しい点耳薬 『オスルニア』をご紹介します
外耳炎の治療においては、前回、日々の自宅での耳のお手入れ(耳そうじや点耳薬)が非常に大事だということをお伝えしましたが、なかなか耳を触らせてくれない!、とても嫌がって自宅ではとてもそうじは無理!といったワンちゃんはたくさんいます。
※ご自宅での耳そうじのやり方はこちらをご覧ください。
これまで外耳炎の治療では、毎日耳そうじをして耳垢を取り除き、その後点耳薬をつけていただくことで治療を行っていましたが、オスルニアという新薬は、特殊な基剤を用いて耳道内に薬が1週間とどまるように設計されています。
そのため、動物病院で耳そうじ後にオスルニアを点耳しますと・・・
その後1週間は自宅では何もしなくていいんです!
また1週間後に病院に行き、2回目のオスルニア点耳を行い、調子よければその2回で治療終了!という優れもの。。。
- 自宅では耳を触らせてくれない!
- ひんぱんに耳そうじには通えないけど、1週間後の再診なら大丈夫!
- 従来の治療法でなかなか良くならない! etc..
そんな方には、新しいオスルニアという選択肢もあります。
点耳処置料金は、片方の耳のみで¥2,268 、両方の耳なら¥4,536となります。
(いずれも税込み価格)
お気軽にご相談ください。
(効果は個体差があります。診察の結果、耳の状態によってはオスルニアを勧めない場合もあります。)
オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。
今日は新しい尿検査機器 『ポケットケム(アークレイ社製)』 のご紹介をします。
慢性腎臓病(CKD; Chronic Kidney Disease)とは
犬猫も高齢化に伴い、慢性腎臓病(CKD、以前は慢性腎不全と呼んでいた)が増加傾向です。
慢性腎臓病CKDは、様々な腎疾患により、腎臓の障害が慢性的に進行していく病態です。
一度進行した腎臓の障害は元に戻すことはできず、残った腎臓の機能をいかに温存するかが治療のカギとなります。
そのため、早期に発見し、治療を開始することが肝心となります。
最近の新しい知見:「タンパク尿が腎臓病の予後を悪化させる!」
慢性腎臓病CKDの治療には、食事中のリンやナトリウム、タンパクを制限する食事療法や、脱水を改善する点滴療法などがあります。
最近では、尿中のタンパク漏出により、腎臓病の動物の予後が悪化することが示されています。
そのため、慢性腎臓病CKDと診断された犬猫において、腎臓の糸球体という部位からのタンパク漏出を防ぐ新しい薬も登場してきました。
そのため、検査によりタンパク尿を認めた動物に対しては、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)や、アンギオテンシン受容体阻害薬(ARB)という種類の薬を投与することをお勧めしています。
院内で迅速にタンパク尿の数値を計測可能に!
当院では、これまで外注検査で尿タンパク漏出を検査しておりましたが、院内で尿タンパククレアチニン比(UPC)を検査可能な機器を導入いたしました。
採尿をしてから約1分間で尿タンパクの数値が計測できるようになりましたので、慢性腎臓病CKDの犬猫において、上記のお薬を投薬すべきかの判断が迅速に可能になります。
左は正常な猫ちゃんの検査結果です。右は尿タンパ漏出を認めた猫ちゃんの検査結果です。
ちなみに・・・
・犬の正常値は、0.5 未満
・猫の正常値は、0.4 未満
と言われています。
しかし、猫の慢性腎臓病CKDでは、タンパク漏出は起こりくいと考えられるため、尿タンパク/クレアチニン比(UPC)が0.2以上の症例では上記の投薬を行うことが推奨されています。
早期にタンパク尿を診断し、治療を開始することで腎臓病の悪化を防ぐことが可能となりますので、腎臓病CKDと診断された犬猫ちゃんは、尿検査(尿タンパクの検査)もご検討ください。
↓慢性腎疾患(CKD)の診断に役立つ新しい検査についても併せてお読みください。
新しい血液検査機器
2016年03月08日 (火)
オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。
今日は、当院の新しい血液検査の機械についてご紹介いたします。
西区豊浜のオークどうぶつ病院では以前から導入しておりましたが、昨年オークどうぶつ病院けやきでも血液検査の機器をもう1台導入し、2台体制で血液検査を行っております。
皆さまをお待たせしないようにと、2台フル稼働で頑張ってもらっています。
2台同じ機械のように見えますが、左側の機械にはもう1台小さな機械が乗っているのにお気づき頂けたでしょうか?
これは、甲状腺ホルモン(T4)、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)を測定することが可能な機械です。
これまでは外注検査として血液を外部の検査センターに送付していましたので、これらの診断には数日間の時間を要していましたが、現在では院内で即日で診断が可能となりました。
10歳以上の高齢猫では、甲状腺機能亢進症という疾患の発生が近年増加しています。
10歳以上の猫ちゃんの健康診断では、検査項目の中に甲状腺ホルモンT4の測定も入れることをお勧めします。
その他、犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)の確定診断や治療効果の判定は即日中に結果が出ます。
犬の甲状腺機能低下症を疑う検査としても活躍中ですので、健康状態で何か気になる点がございましたら、診察の際にお気軽に声をおかけください。
- フィラリア検査: ¥3,240
- 血液検査(健康診断): ¥6,480 ~
- 甲状腺ホルモン検査(T4): ¥4,320
- ACTH刺激試験(クッシング症候群の診断検査): ¥12,960 ~
- クッシング症候群の治療モニター(コルチゾール1回測定): ¥6,480~
オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。
先日、製薬会社主催の新薬発表のセミナーに参加してきました。
これまでアトピー性皮膚炎や食物アレルギーでかゆくてかゆくてたまらず困っていたワンちゃんには朗報となる新薬ですが、安定供給までにはもう少し時間がかかるらしく、発売は今年のどこかで…とのこと。
発売の情報が入り次第またこちらでお知らせいたします。
一刻も早く、かゆみで苦しむワンちゃんの救世主となりますように。。。