オークどうぶつ病院けやき 副院長の前谷です。
先日、うちのアミカの病気甲状腺機能亢進症についてお話しましたね。
前回記事をまず読みたい方はコチラをご覧ください。
前回、猫の甲状腺機能亢進症の症状をお伝えしました。
疑わしい猫ちゃんに、ご自宅でできる「甲状腺の触診」という検査があります。
もちろん僕ら獣医師でも、触診で答えが100%分かるわけではないのですが、甲状腺が明らかに触れるくらい大きく前回記事のような症状がある場合は、甲状腺機能亢進症の疑いが強くなります。
まずは猫ちゃんの甲状腺の解剖です。
上図のように、猫の甲状腺は、のどの下の首を走る気管の横に左右にあります。
触診の方法は、以下の通りです。
1.上図のように、猫の頭を上に向けます。
2.中央に真っすぐ堅く触れるのが「気管」です。その気管を親指と人差し指で左右からつまむようにして、上下へと滑らせます。
3.のどの下⇔前胸部と上下に何度も滑らせていると、その指に「プルン」と触れては逃げるのが「甲状腺」です。
甲状腺機能が正常な高齢猫ちゃんでも、触れる子はたくさんいますので、「うちの子、触れたから病気だ~!!」と慌てる必要はありませんよ。まずは病院にお越しいただいて、甲状腺ホルモン測定の検査を行ないましょう。
猫ちゃんの甲状腺機能亢進症は、10歳を過ぎたあたりで発生頻度が高くなります。
難しい方法ではありませんので、10歳以上の猫ちゃんを飼っている方は、ぜひご家庭でやってみてくださいね。
・・・・・前置きが長くなりましたが、アミカについての病気の話の続きです。
甲状腺機能亢進症と診断されたアミカですが、まずは内科療法を行っていきます。
内科療法には2つ方法があります。
1.チアマゾールという甲状腺ホルモンを抑える薬を服用する方法
錠剤のおくすりを朝晩(あるいは1日1回)飲ませて、甲状腺ホルモン分泌を抑える治療法です。
少ない量から始めて、甲状腺ホルモンT4値をチェックしながら増量し、その子に対しての適量を決めていきます。
一度用量が決まっても、定期的にT4をチェックする必要があるのと、生涯にわたってお薬を飲まなければなりませんが、大きな副作用も少ないので、日本国内では最も一般的に行われている治療方法です。
2.食事療法でコントロールする方法
ドライフード(1種類)と缶詰(1種類)があります
ヒルズのy/dという療法食を用いて、食事で甲状腺ホルモン分泌を抑えていく治療法です。
y/dというフードは、特殊な製造工程で、体の中で甲状腺ホルモンの原材料となるヨウ素(ヨード)を極限まで抑えてフードを製造しています。そのフードを毎日食べ続けることで、甲状腺ホルモンの原料であるヨウ素を体の中から枯渇させて、ホルモン分泌を抑えていく方法です。
副作用がない点がメリットですが、おやつや人間の食べ物、同居猫や犬のフードを少しでも口にしてしまうとヨウ素を摂取してしまいますので、効果がありません。
そのため、フードなら選り好みせず何でも食べる猫ちゃんで、単独飼育(1頭だけで飼われている)の猫ちゃんが適応となります。
うちのアミカはというと・・・
大変グルメに育ちました。病院で粗食に耐えさせてたはずなんですけどねぇ。。
食べ物へのこだわりが強く、何種類かのフードをミックスしてあげても、嫌いなフードだけより分けて残します。
そんなアミカにはy/dは難しく、必然的にチアマゾールの服用となりました。
甲状腺ホルモンT4の正常値は1.0~5.0 μg/dLですが、病気発覚時点での数値は6.5 μg/dLでした。
チアマゾールを服用して、T4値がおおよそ3.0 μg/dL前後で推移し、特に副作用もなくコントロールできましたよ。
後編へとさらに続く。。。
うっとり♡