フェレットの病気の予防について

フェレットには、特有のかかりやすい病気があります。飼育環境に気をつけたり、知っておくことで早めに来院していただくなど、病気の予防や早期発見につながればと思い、気をつけるべき疾患などを挙げました。

 

 

インフルエンザ

フェレットは、ヒトのインフルエンザが感染する珍しい動物です。普通はインフルエンザウイルスは動物種を越えて感染することはまれですが、フェレットは飼い主さんからインフルエンザが感染しますし、フェレットから飼い主さんに感染することもあるので注意して下さい。

 

フェレットの場合は感染しても軽症で済むことが多く、鼻水や発熱といった呼吸器症状が起こります。重症の子では食欲が落ちる場合もあります。通常は、1~2週間で徐々に対症療法で回復します。タミフルなどの抗インフルエンザ薬は必要としませんし、ワクチン接種の必要性もありません。

 

 

若いフェレットに多い病気: 腸閉塞

若いフェレット(特に1歳未満)で多い病気として腸閉塞があります。フェレットはかじることが大好き。お気に入りのものを見つけては、自分の隠し場所に持っていってかみかみ・・・。そうやっている間にかじって飲み込んでしまうと大変です。

 

胃の中に入った異物は、腸に流れるとつまってしまい、とたんに元気がなくなりグッタリしてしまい、何度も吐いたりします。(フェレットはあまり吐かない動物ですので、フェレットが吐いた場合はかなり強い吐き気があるということです。)

 

治療は、手術で異物がつまった腸を切って異物を摘出します。状態が悪い中での全身麻酔下での手術ですから、命がけの手術となります。

 

フェレットの腸閉塞の原因で多いものは、タオルやハンモックなどの線維のかけら、ゴムやプラスチック製品などです。2歳以上のフェレットでの腸閉塞では、毛球(毛玉)が原因となることも多いです。
フェレットのケージの中や遊ばせる室内には、口にしてしまう危険なものが落ちてないどうか、十分に注意
をしてください。

 

 

フェレットの3大腫瘍にご注意を

3歳頃を過ぎるとフェレットもシニア期です。3歳頃を過ぎて発生が多くなると言われているのが、フェレットの3大腫瘍(副腎疾患、インスリノーマ、悪性リンパ腫)です。

 

副腎疾患・副腎腫瘍 (ふくじんしっかん・ ふくじんしゅよう)

フェレットは副腎疾患がとても多い動物です。原因の一つとしては、未熟な年齢での不妊手術などが言われています。
悪性の副腎腺癌や良性の腺腫といった腫瘍、あるいは過形成という腫瘍ではない細胞の増殖などが起こり、副腎のサイズが大きくなります。
副腎疾患のフェレットは、脱毛(お尻や体など)やメスだと外陰部の腫大、オスだと前立腺肥大で尿が出にくくなるなど様々です。
フェレットの脱毛は、ホルモンバランスなどにより起こる「季節性尾部脱毛症」という病気がありますが、これはしっぽに限定した脱毛です。しっぽからお尻に脱毛が広がるようであれば副腎疾患が疑わしいです。
治療には、開腹手術による副腎摘出や1 ヶ月毎の注射による内科治療などを行います。

 

インスリノーマ

インスリノーマとは、膵臓のインスリンを産生するβ細胞が腫瘍化する病気です。血糖値を下げるインスリンの分泌が過剰になるため、低血糖を起こしやすくなります。
症状としては、体重が減ったり元気がなくなる、寝起きにボーッとしたり、ひどい場合はよだれを垂らしたり痙攣発作が起きます。
治療は、開腹手術で膵臓に出来た小さなしこり(多くは1mm以下~数mm)を摘出するか、対症療法として、食事の間隔を詰めて与えたり強制的に食事を食べさせることで低血糖を予防する、血糖値を上げる作用のあるステロイドホルモンを投与するなどを行います。

 

悪性リンパ腫

リンパ腫というのは、血液細胞であるリンパ球が腫瘍化する悪性腫瘍です。フェレットにはこの病気が非常に多いです。
全身のあらゆる臓器に起こります。体表や胸の中、あるいは小腸の周りのリンパ節が大きく腫れて、様々な症状が出ます。肝臓や脾臓といった臓器が腫瘍化して腫れることもあります。
診断には、細い針で腫れたリンパ節や臓器を刺して細胞を採取し、顕微鏡で見る、あるいは病理の検査センターに送付して診断します。
リンパ腫は全身ガンなので、治療は抗がん剤治療で行います。フェレットのリンパ腫に対して開発された抗がん剤治療計画がありますので、様々な抗癌剤の組み合わせで治療を行います。