犬のノミ・ダニ予防について
福岡市内の公園や草むらなどには、意外にもたくさんのノミやダニがいます。毎年、春から秋にかけては、ノミ・ダニをくっつけたワンちゃん・ネコちゃんが多数来院します。
ノミは、ゴマ粒くらいの小さな虫ですが、動きがとても速く、毛をかき分けて見つけてもすぐに逃げてしまいます。また、ジャンプ力もあるので、犬同士がすれ違った際にジャンプして飛び移ることも可能です。ノミは、体のあちこちを走り回り吸血を行う寄生虫です。人の体には寄生しませんが、人にも刺してひどい痒みを引き起こします。
マダニは、ノミのような運動能力を持たないので、草の先端にしがみついて、ターゲットのワンちゃんが来るのをじっと待っています。犬が草むらを通った際に犬の体に移動し、毛の少ない場所(鼻や耳など)に移動して吸血を開始します。ダニは、口器(くちばし)を突き刺してセメント物質で固め、長い時間をかけて吸血します。
ダニが寄生しているのを見つけたら、無理に引っ張らずに病院にお越しください。(無理に引っ張るとくちばしだけ体に残り、皮膚炎が起きる場合があります。)
お散歩が好きで、特に草むらが大好きなワンちゃん、犬がたくさん集まる場所へ行く機会があるワンちゃんは、ノミ・ダニの予防をしっかりしておきましょう。
ノミ・ダニの寄生は、様々な病気を引き起こします。ノミがいると痒いのであちこちグルーミングをしますが、その際にノミを食べてしまうと、瓜実条虫(うりざねじょうちゅう・サナダ虫)という寄生虫が腸の中に寄生します。うんちにお米粒くらいの小さな動く虫が出てきます。実はこの寄生虫、動物病院で最も診察する機会の多い寄生虫なのです。
また、ノミの唾液にアレルギー体質を持つワンちゃんでは、ノミが一匹しか寄生していなくても、ノミに刺されると腰や背中にとても強い痒みが出て、腰をかいたりかじったりしてひどい皮膚病が起きます。(ノミアレルギー性皮膚炎)こういったワンちゃんでは、毎年のように同じような症状で来院することが多いので、毎月しっかりノミの予防をしていただくのが肝心です。
マダニにより引き起こされる恐ろしい病気で、バベシア症という病気があります。バベシアは、犬の赤血球に寄生する原虫です。バベシアが寄生した赤血球は破壊されますので、重度の貧血を起こしてしまいます。
また、2013年に初めて日本でも死者が出たSFTS(重症熱性血小板減少症候群)という病気も、ヒトがダニに咬まれて感染しますが、発症すると特効薬や効果的な治療法はまだなく、死亡率が30%(高齢者ではもっと高い)と言われる非常に怖い伝染病です。
これまで犬・猫は、感染しても症状を出さない(不顕性感染)と考えられていましたが、2017年に入って犬・猫それぞれでSFTSを発症した症例が相次いで報告され、さらに7月には、感染した野良猫から咬まれた50代の女性が死亡しました。(世界初の報告と大騒ぎになりましたが、咬まれたことが直接の感染源かどうかは分かっておりません)
犬はマダニを人間の生活圏に近づける存在ですから、ノミ・ダニ予防薬を使って定期的に予防をしていくことが、犬と飼い主さんともに健康を守ることにもつながるのです。
ノミ・ダニは、気温が13℃を下回ると活発に活動しなくなるため、真冬はあまり外では見かけなくなります。
ですから、フィラリア予防と同じシーズン(4月~12月)の予防をオススメしています。しかし、ノミは少しでも暖かい環境があると室内でも繁殖できるため、外から猫が出入りしたりする環境では、1年中ノミ予防をオススメします。
ノミ・ダニ予防薬は月1回投与します。背中につけるスポット剤がこれまでの主流でしたが、最近では飲むタイプの経口薬が増えてきました。フィラリアとノミの予防を1剤で行うものや、最近ではおやつタイプの製剤で、フィラリアとノミ・ダニ、お腹の寄生虫までを1剤で予防するオールインワンの薬も登場しています。ノミ・ダニだけを3 ヶ月間予防するブラベクトというおやつタイプの薬も登場しましたので、さらに選択肢が増えました。
フロントラインのようなスポット剤と比較して、経口薬は飲んですぐにシャンプーが可能だったり、スポット剤のように背中がベトつかないなどのメリットがたくさんあります。その中でも一番のメリットは即効性です。食べるタイプの経口薬は、スポット剤と比較してノミ・ダニが落ちるまでの時間が早く、例えばノミアレルギー性皮膚炎の犬では、刺されて痒みが出てしまう危険性を低くすることができます。
うちの子は定期的にノミとりシャンプーで洗っているから大丈夫だと言われる方もいらっしゃいますが、ノミとりシャンプーでは全身のノミやマダニに効果があるわけではなく、また、その時は落ちても1 ヶ月予防するわけではありません。また、市販のスポット剤も、ピレスロイドと呼ばれる副作用の強い殺虫剤を使っているものも多いですし、全身にきちんと効くわけではありませんので、下記のような病院専用薬を使って定期的に予防をしましょう。
例えば、5kgの犬で代表的な薬の料金は以下の通りとなります。
うちの子にはどの薬が良いのか、スタッフまでお気軽にお問い合わせください。
製品名 | 効能 | 剤型 | 料金 |
フロントラインプラス | ノミ・ダニ予防 | スポット(液)剤 | ¥1,600 |
レボリューション |
フィラリア予防 ノミ予防 (※マダニは予防できない!) |
スポット(液)剤 | ¥2,000 |
ネクスガードスペクトラ |
フィラリア予防 回虫・鈎虫・鞭虫 ノミ・ダニ予防 |
チュアブル製剤 | ¥3,100 |
ネクスガード | ノミ・ダニ予防 | チュアブル製剤 | ¥1,800 |
ブラベクト錠 |
ノミ・ダニ予防 (3ヶ月間有効) |
チュアブル製剤 | ¥4,600 |
(料金は税抜き)